タワマン、温泉地などを豪快に買っていく外国人

 したがって世界的にみても所有者の権利が強く守られている日本の不動産は、外国人投資家にも人気が高い。中国人などは、自国で稼いだカネの投資先として、日本の不動産を買いたがる。彼らは自国ではいつ資産を没収されるか常にリスクに晒されている。コロナ前などは、大量に押し寄せた中国人観光客の一部が、まるでお土産を買うような気分で、都内のタワマンを買って日本滞在時のホテルがわりにしたり、息子や娘の日本留学用の住まいにしたり、滞在した温泉地が気に入って旅館ごと買収するなど豪快な買い物が話題となった。最近では当初はオーストラリア人やニュージーランド人が主流だった北海道ニセコのスキーリゾート周辺も今や中国人投資家が跋扈する。

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 こうした動きは不動産を仲介する立場からはありがたいお客様だ。中国人富裕層は急拡大している。グローバルウェルスレポートによれば2018年における純金融資産で100万ドル以上を保有する中国人の数は348万人で、アメリカの1735万人につぐ世界2位。3位である日本人280万人を大幅に上回っている。外国人富裕層が日本の不動産の安全性を評価して、日本人が驚くほどの高値で不動産を買い求めるのは、ビジネス上は悪い話ではない。

国境離島、基地周辺の土地買収は、日本にとってハイリスク

 だが、こうした行為が日本の国防上重要な施設や設備、あるいは国境離島のような地域になれば話は別だ。自衛隊や米軍基地周辺の土地が買収されて、攻撃を受ける、妨害電波などを発せられて混乱に陥る、などのあらゆるリスクに対して、日本はこれまであまりに無防備であったと言わざるを得ない。

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 今回の法案では、対象区域での売買において、仲介業者に重要事項説明義務を課したり、一定面積以上の取引については事前に届け出ることなどを義務付けている。また地域内調査などで、こうした施設などの機能を阻害する可能性がある行為に対しては、中止命令や従わない場合の刑事罰なども科される。いっぽうで国の関与によって取引が阻害された場合には、国に対して買取りを請求できる仕組みも設けている。