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結果で叱らない
そんな野村克也が、亡くなる直前まで考えていたことは何か。悲しみ、戸惑い、老い、後悔、不安、発見、希望、夢……“ノムさんの真実”を、愛情を持って明かしたい。
「人生、こんなはずじゃなかった」と焦りを抱く人に、野村の“最期のあがき”を紹介したい。
「おまえはワシのことをよう知っている。自信を持って書け」
そういってくれたあの日から、すでに2年以上がたった。野村の死によって、共著という形にこそならなかったが、それでも、この書籍『遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと』は、「野村と共に書き上げた」という思いでいる。
愛弟子の一人、山﨑武司は年齢、技術的にピークを過ぎたと言われた38歳の時、楽天で野村と出会った。
2007年、本塁打43本、108打点をマーク。自身のシーズン最高記録を打ち立て、本塁打王と打点王に輝いた。
「一度もバットを振らず三球三振に倒れても、“全部まっすぐを待っていたのですが、3球ともカーブが来ました”と理由があれば、叱られなかった」と明かした。
〈結果ではなく、プロセスを重視する〉
それが、野村の人生哲学だった。
偶然、めぐってきたバッターボックス。私なりに考え、準備し、挑んだ。だから三振をしても叱られないだろう。ベンチに戻ってきた私に、野村監督はなんと声をかけてくれるだろうか。
「ふん、まあまあやな」
そんな声が聞こえた。