1ページ目から読む
4/4ページ目

結果で叱らない

 そんな野村克也が、亡くなる直前まで考えていたことは何か。悲しみ、戸惑い、老い、後悔、不安、発見、希望、夢……“ノムさんの真実”を、愛情を持って明かしたい。

「人生、こんなはずじゃなかった」と焦りを抱く人に、野村の“最期のあがき”を紹介したい。

「おまえはワシのことをよう知っている。自信を持って書け」

 そういってくれたあの日から、すでに2年以上がたった。野村の死によって、共著という形にこそならなかったが、それでも、この書籍『遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと』は、「野村と共に書き上げた」という思いでいる。

 愛弟子の一人、山﨑武司は年齢、技術的にピークを過ぎたと言われた38歳の時、楽天で野村と出会った。

 2007年、本塁打43本、108打点をマーク。自身のシーズン最高記録を打ち立て、本塁打王と打点王に輝いた。

「一度もバットを振らず三球三振に倒れても、“全部まっすぐを待っていたのですが、3球ともカーブが来ました”と理由があれば、叱られなかった」と明かした。

〈結果ではなく、プロセスを重視する〉
 

現役時代の野村克也 ©文藝春秋

 それが、野村の人生哲学だった。
 
 偶然、めぐってきたバッターボックス。私なりに考え、準備し、挑んだ。だから三振をしても叱られないだろう。ベンチに戻ってきた私に、野村監督はなんと声をかけてくれるだろうか。

「ふん、まあまあやな」

ADVERTISEMENT

そんな声が聞こえた。

遺言 野村克也が最期の1年に語ったこと

飯田 絵美

文藝春秋

2021年6月28日 発売