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 彼女は3月、ヤクルト側が主催した追悼試合で、始球式を行った。

「観戦するときもマスクをしなければならないのなら、前向きな気持ちで着けたい」という思いと、追悼試合を実施してくれた両球団へ感謝の思いを込めて作り上げた。

始球式を務めた孫息子の気づき

 阪神側が主催した追悼試合。始球式でマウンドに上がった孫息子の忠克さんは、日本大学の2年生で野球部に所属している。

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孫娘・彩也子さんがデザインしたマスクをつける、孫息子の忠克さん 写真:著者提供

「入学した昨年、4月から8月まで練習ができませんでした」と打ち明けた。授業はオンライン、友達を作る機会もない…。

 この日の追悼試合も、昨年はコロナ禍で延期され、今回も観客数を制限し、満員御礼での実施は叶わなかった。

 それでも、「人数制限があるという中、祖父のために追悼試合を考えてくださって感謝しかありません。ファンの方からも温かい拍手をいただけて、祖父はいろいろな人に愛されていたんだと、感じました」と目を輝かせた。

「人はその気があれば、あらゆる状況、あらゆる局面から何かを学ぶことができる」と彼らの祖父は言い遺した。

 逆境に負けない。苦しい状況の中に光を見つける。孫たちの思考と行動は、まさに野村のDNAを受け継いだ証しだった。