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横浜市は限られた人たちだけの「村社会」

 私が横浜市を「日本一大きい田舎」と表現するのは、面積の広さや緑の多さが理由ではまったくありません。

 横浜市の場合、中区と西区に利権やしがらみが集中しているだけでなく、そのネットワークに属するいわゆる有力者の方たちが、みんな知り合いなのです。要は政治家を含めた権力者ら限られた人たちだけの「村社会」なのです。

 いっておきますが、私はすべての利権やしがらみを否定しているわけではありません。そういったものがあることで成り立つこと、進んでいくことがあるのも理解しています。

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©️iStock.com

 しかし、コロナ後には、いい加減日本社会も、世代交代もふくめて、さまざまな社会システムの構造変化が必要です。

 横浜市民のみなさんも、主としてコロナ禍への対応というところで、政治への不信感をお持ちかと思います。

 そして喫緊の課題は、ポストコロナの時代、コロナ禍で苦境にたった人々をはじめ、380万市民に対してどのような形で行政サービスが行われるのか、です。そのサービスは、それぞれが自力で元気にがんばっていける環境の支えとなり、誰もがコロナ以前の生活水準へと戻っていける規模の経済効果がなければなりません。

 そのためには、利権やしがらみの構造を一度リセットする必要があるのです。

「人」に紐づいた選挙は注目される

 私もベイスターズの球団社長時代に経験しましたが、何か目立つアクションを起こす際は、細心の配慮が必要です。いったん「地域に力を持つ知り合いの輪」から異端視され弾き出されると、元の輪に戻れなくなり、アクションの実現が難しくなってしまうからです。

 だから、思いきったアイデアを行動に移して一気に頭角を現すような若者は出てきません。一切のしがらみを無視し、純粋に横浜市の未来のために打って出るようなフレッシュな市長候補も現れないでしょう。

 過去、注目度の高かった全国各地の知事選・市長選を振り返ってみると、「人」に紐づいた選挙であった点が共通していると思います。

 小池百合子さんは自民党の推薦を受けずに選挙戦に臨み、東京都知事に当選しました。松井一郎さんは自民党を離れ、大阪維新の会に合流。「大阪都構想」実現を掲げて大阪府知事になりました。また、吉村洋文さんも大阪維新の会から大阪市長選に出馬、当選を果たしています(2019年の大阪ダブル選で両者は立場をスイッチ)。

 それぞれが掲げた政策の是非や、首長となってからの実行度はさておき、いずれのケースも旧来型の権力に頼った戦い方を選ばず、各自治体の未来を見据え、何より住民のために自治体のサービスはどうあるべきかに向き合う姿勢を打ち出した選挙戦を展開しました。そして、それは有権者に対し、新鮮な力の台頭を強力に印象づけた。

 だからこそ、大いに盛り上がったのではないかと思います。