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「もうムリって思って、相手にすんのをやめたんです…」加減することなく息子を殴り、ウサギ用ケージに監禁…犬を次々と死なせた夫婦の言い訳

『「鬼畜」の家―わが子を殺す親たち―』より#1

2021/07/11
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行政に相談した母親

 とはいえ、夫婦は夫婦なりに玲空斗君の育児に悩んでいたらしく、小百合や有紗にたびたび「話を理解しない」「言うことを聞かない」などと愚痴をこぼしていた。自分たちではどうしていいか、わからなくなっていたのだ。

 悩みをより深刻にしたのは、同年夏の終わり頃から、当時2歳だった次女の玲花ちゃんまでも玲空斗君と一緒になって家の中を散らかすようになったことだ。食用油を床にぶちまけ、きょうだいのぶんの食べ物まで勝手に口に入れてしまう。夫婦の目には、玲空斗君と玲花ちゃんが、家庭を壊す悪魔のように映った。

※写真はイメージです ©iStock.com

 自分たちだけではどうにもならないと考えた夫婦は、10月に入ると玲空斗君と玲花ちゃんの件を行政に相談するようになる。最初に話を持っていったのは、同月3日に行われた3歳児の健康診断でだった。この時の記録では、玲空斗君の身長は88センチ、体重13キロと平均と比べて少し小さいくらいで、特に大きな異常は見つかっていない。朋美は、問診の際にこう相談した。

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「玲空斗があまりしゃべれないんで困ってます。2語以上つづけて話ができなくて、家でも何でもかんでも散らかして、注意してもぜんぜん聞かないんです」

 担当者は話を聞いて、「玲空斗君に対する心理面接をしてみましょう」と提案した。心理面接とは、子供に話しかけたり、行動のテストをしたりすることで、発達や精神に障害があるかどうかを調べるものだ。その場で、担当者による心理面接がはじまる。ところが、朋美が途中でいきなり中止するよう求めた。

「今から長女を学校に迎えに行かなきゃならないんです! なので、また今度にしてください」

 そして玲空斗君をつれて帰宅し、そのまま担当者との連絡を絶ってしまった。

 この後も育児に手を焼いた夫婦は結局、秋から冬にかけて電話相談や児童相談所に連絡して、同様の相談を行っている。担当者は親身になって、面会や一時保護の話までしたが、いずれも2人は勝手にキャンセルする、電話に出なくなる、といったことをくり返して支援の道を自ら放棄してしまった。

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