1ページ目から読む
4/5ページ目

「児相に見せたら家族がバラバラになる」

 忍の行為は、軽くお尻や手を叩くなどといったものではなかった。玲空斗君の全身に「児相に見せたら家族がバラバラになる」ほどのアザができていたというから、大人の力で加減せずに暴行をくわえていたはずだ。次女の玲花ちゃんにしていたように、持ち上げて顔面を拳で殴りつけるとか、足で顔を蹴りつけるといったことが行われていたのではないか。

©iStock.com

 裁判で忍と朋美は、これは理解力の乏しい玲空斗君への「しつけ」だったと主張した。朋美は前回の裁判で忍のDVが恐ろしくて止められなかったと語っていたが、あっさりと翻してそう自己弁護したのである。弁護側も、玲空斗君に「発達障害」あるいは「発達遅滞」の傾向があるとして、養育する親には大変な負担がかかっていたと訴えた。

 たしかに説明を聞くかぎり、玲空斗君の言葉は平均より遅れているようだし、衝動的な行動が目立つ。弁護側が証人として法廷に連れてきた医師も、児童相談所の所見から推測して「大変育てにくいタイプ」「自己コントロールできない子」だった可能性がある、と感想を述べた。

ADVERTISEMENT

 しかし、注意しなければならないのは、これらがあくまで夫婦側の主張であり、児童相談所での一時保護という特殊な環境で見られた姿だということだ。間近で玲空斗君を見ていた朋美の妹、有紗の意見は違う。2012年の夏、朋美が妊娠して体調を崩したため、有紗が玲空斗君を自宅に引き取ってしばらく世話をしたことがあった。彼女はその時の経験から、次のように語る。

「玲空斗はあまりしゃべれないから、大変は大変です。でも、話を聞いたり、こちらがしっかりしゃべってあげれば、ちゃんと反応が返ってきました。自制心もありますし、育てにくいと感じたことはなかったです」

 2歳を過ぎてもうまくしゃべれない子はいるし、活発な男の子であれば食べ物を散らかすなど当たり前だ。ましてや適切な養育がなされていなければ、そうした特徴がより顕著に出現することはある。

 有紗の証言から考えるに、玲空斗君にある程度育てにくい傾向はあったかもしれない。それでも普通の夫婦であれば、子供にあわせて養育方法を変えるものだが、2人は思うに任せないというだけで暴力に走った。ゆえに、玲空斗君の発達の遅れにますます拍車がかかったのではないか。