一方的な言い分では、裁判所は信じてくれません。そもそも、大多数のケースにおいて、夫婦それぞれにお互いに対する不満や言い分があり、裁判所としても、喧嘩両成敗的判断が下されることもままあります。
言い分を認めてもらうためには、裁判所に「証拠」を提出しなければなりません。しかし例えばDVの場合、ご自身の中で悶々と被害に悩まれた後で、ようやく一大決心をして、ご相談に来る。そんなパターンが大半です。被害から時間が経過してからのご相談では時すでに遅しであることが多いのです。ケガの痕も消えてしまっているし、DV発生直後に病院に行ってなければ診断書もない。証拠が準備できない、という事態になるわけです。
また、夫の不倫のケースでは、探偵費用をかけるなどして直接的証拠を押さえなければなりません。
こうした懸命な努力をして不倫やDVの証拠保全を万全にしたとしても、受け取れる慰謝料は数百万程度が大半。一生生きていける金額とは言えません。
経済的自立は、親権者を決める上でも必要な要素となってきます。裁判所から「経済的に安定していない親の元で子供を監護させて良いのか?」と評価されないためにも、仕事による安定収入の確保は優先的な条件となってくるのです。
第4条:親権を取りたいなら、簡単に子供を手放さない
離婚相談の中で多くを占める項目が、親権問題です。これは、一度深刻化すると泥沼が待っています。
親権を決める上で一番有名な原則が「母性優先の原則」です。これは、特に乳幼児の発育にとって、母親の存在がより必要であるという考え方です。
「母親なら、原則的には親権を取れるのでは?」
そうお考えの読者の方も多いのではないでしょうか。
ところが、確かに結果的に母親が親権を取るケースも多くありますが、親権は多くの要素によって決められますので、事はそう単純ではありません。
その一例として「監護継続性の原則」というものがあります。特別な事情がない限り、これまでに子供が育ってきた環境を今後も継続した方が良いという考え方です。別居中の夫が「週末に野球を一緒に見に行く約束をしている」などとお子さんを連れ出し、そのまま自分の元へと返してくれない。そんなケースの場合、時間の経過とともに「監護継続性の原則」が適用されてしまったら、もう大変です!
もちろん、裁判所では、連れ去りのケースに対応して、子供を取り戻す手続きを用意しています。しかし、取り戻すのはそう簡単ではありません。実際、私が過去に扱った事件でも、連れ去った側の父親が、母親の元に戻せという裁判所の命令に従わなかった事例がありました。このケースでは、結局、年単位で母親と子供が離れ離れになってしまったのです。
基本的には、離婚に関する色々な事が決定するまでは、お子さんを容易に手放さないようアドバイスいたします。