なお、別れた後の養育費についてご説明いたします。
養育費は、お子さんが「成年に達する月まで」支払うと定めることも多いですが、最近では、「高等教育終了時まで」(つまり、大学などを卒業するまで)の支払義務を認める判例も出ており(大阪高決平2.8.7家月43巻1号119頁、福岡高決昭47.2.10判時660号60頁、東京地平17.4.15等)、この判例を受けて、「高等教育終了時まで」と定めることも多くなっています。
第5条:隠されたら共有財産の特定は困難に! 別れる前に特定を!!
「離婚したら女性側が家をもらえるものだ」と思っている方も少なくありません。ところが、財産分与は単純なものではありません。
まず、基本的な考え方をご説明いたします。
婚姻生活中に形成した資産は、(妻が専業主婦で)夫が稼いだお金であれ、法律的には夫婦二人の財産とみなされます。「夫婦双方の助け合いがあって、形成されたもの」だと考えられているからです。これを共有財産と言います。
もともとは「二人の財産」という定義なわけですから、離婚後は妻の側も、基本的にその半分を受け取る権利を持ちます。これを財産分与と言います。
ところが、たくさんの財産分与をしなければならないことが想定される夫の中には、共有財産を巧みに隠す人も! 「もっと共有財産があるはずなのに、見つからない」という相談を妻から受けることがあります。
厄介なのは、一度隠された資産はなかなか見つけるのが難しいということです。
弁護士会照会制度で、銀行に夫の口座がないか全店照会をかけてもらえませんか、という相談を受けることもありますが、銀行もプライバシー保護の観点からそう簡単には教えてくれません(銀行が口座情報の開示に応じるには、いくつかの要件を満たさなくてはならないからです。なお、全店照会による銀行口座の特定は、本稿執筆時点ではメガバンクのみが対応しており、地方銀行や信用金庫・ネットバンキングは基本的に対応していません)。
別居してしまうと、財産を探すことはより困難になります。一方、同居中であれば、共有財産の通帳や権利証などが家の中に転がっていて、財産を把握できることもありますよね。
別れる前、場合によっては離婚を表明する前においても、共有財産の内容を把握しておくことが必要なのです。
ちなみに、夫が働いている会社で加入している厚生年金も共有財産の対象です。離婚から原則2年以内に日本年金機構の年金事務所に請求すれば、保険料納付記録の最大2分の1を分割してもらうことができます(按分割合を何割にするかで夫婦間で揉めることもあるのですが、今回は紙幅に限りがあり割愛します)。
年金分割の手続きは、年金事務所(または共済組合等)に「年金分割のための情報通知書」を発行してもらうところからスタートします。まずは、年金事務所に、「離婚したので年金分割をしたいのですが」と電話してみましょう。離婚後の老後の生活をより安定させる意味でも、見逃せない制度の一つです。
(取材・構成 鈴木英寿)
もり しえり/1989年茨城県生まれ。インテグラル法律事務所パートナー。早稲田法学部、早稲田大学法科大学院卒業。シングルマザーの家庭に育った経験から、依頼者の立場に寄り添った離婚相談を心がける。
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