日時ははっきりとわからない。けれどこの夏、東京で何かが起こるのは、たしからしい。
スポーツの祭典のことじゃない。じゃあほかにいったい何が起こるのか?
巨大な「顔」が出現するのだ。
ある日あるとき、実在する誰かの顔が大きくなって、東京のどこかの空に浮かぶという。
現代アートチーム目[mé]の手がける新しいプロジェクト、《まさゆめ》である。
視覚を直撃する体験を実現せん
目[mé]はアーティスト荒神明香、ディレクター南川憲二、インストーラー増井宏文を中心に活動するチーム。
その名の通り「目」すなわち視覚を直撃する体験を実現せんと、いつもあれこれ企んでいる。
これまで無数に発表をしてきた作品は、たとえばこんなものだった。
かたちも色合いも寸分違わぬ巨大な岩をふたつ並べて、「一見ふつう、でも見たことない!」と叫びたくなるような光景を現出させた《repetitive objects》。
はるか遠くの海面を眺めやるときのボリュームや質感、存在感を間近に感じるため、遠くの海の一部を切り出してきたかのような《景体》。
茂みをかき分けたどり着いた小さい沼は、いつかどこかで見覚えがありそう。けれどそこは、水面に降り立つことのできる不思議な場所だったという《Elemental Detection》。
この夏、東京のどこかに、巨大な人の顔が浮かぶ
説明しているこちらが不安になるほどの摩訶不思議な世界。言葉を介するなどのまどろっこしいことは抜きに、不確かなこの世界を私たちの実感にグッと引き寄せてくれる作品ばかりだ。
そんな彼らが、ここ数年にわたり準備を進めてきた、とっておきのプロジェクト。それが《まさゆめ》となる。
この夏のいずれかのタイミングに、東京のどこかに、巨大な人の顔が浮かぶ……。わかっているのはそれくらいなのだけれど、起こることの説明としてはこれで合っているのだろうか。目[mé]にお会いできたので、訊いてみた。
「はい、合ってますよ。ですからこの夏、東京にいる人は、誰でも空に浮かぶ巨大な顔と遭遇する可能性があります」
と、ディレクター南川憲二さん。