文春オンライン
電子版TOP

「少女はその道の大家(=宮崎駿)がいるのでね」ジブリ入社試験に落ちた細田守が果たした‟偉業”《『おおかみこども』地上波放送》

CDB 2021/07/02

 細田守作品の中では『バケモノの子』『おおかみこどもの雨と雪』に次ぐ興行成績を上げ、本家アカデミー賞アニメーション部門にノミネートされるなど海外で関心を集めながら、今回の金ローラインナップからは外されてしまったこの作品は、細田守という作家が試行錯誤しながら「少年の問題」を考え続けていることを象徴した作品だったと思う。

新作『竜とそばかす姫』で「少女ヒロイン」モノに回帰か

 「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」でも、野獣やバケモノという社会から排除された獣性・暴力性に、男性性や父性が重ねられている。「シングルマザーが農業で二児を育てる」といういささか非現実的に思えるファンタジーと、同時に「父親の写真がほとんど残っておらず、免許証を遺影がわりにしている」という、まるである種のアウトローの父親の実話のような奇妙に生々しいリアリティが混在しているのが細田守作品の特徴だ。

 すでにトップ監督の一人に数えられている人気アニメ作家だが、細田作品はまだ、作家としての完成形を見せる前の繭の中の試行錯誤に見える。 

ADVERTISEMENT

 7月16日に公開される最新作『竜とそばかすの姫』の主人公・すずは女子高生である。出世作である『時をかける少女』以来の少女ヒロイン作品となる最新作だが、単純に世間のメインストリームに戻ったというより、これまで少年を描くことで取りこぼしてきた「少女の物語」をもう一度少年の物語と融合させる作品を予感させる。

『サマーウォーズ』で描いたサイバー空間と大衆の意識、『おおかみこども』や『バケモノの子』で描いた異端や獣性の排除という、これまでの細田守作品のモチーフをジグゾーパズルのように統合していることが予告編からは伝わってくる。

 その賛否の分裂も含め、日本のアニメーションにとって代替することのできないユニークな作家のひとつの集大成を見る前に、過去作品をもう一度振り返ってみておきたいと思う。 

「少女はその道の大家(=宮崎駿)がいるのでね」ジブリ入社試験に落ちた細田守が果たした‟偉業”《『おおかみこども』地上波放送》

メルマガで最新情報をお届け!

メールマガジン登録

関連記事