さっきあいさつした同僚に、社内ですれ違った。またあいさつするのも変だけど、無視するのもおかしい気がするし……。人間関係のちょっとしたルールには、発達障害を持つ人も持たない人も頭を悩ましているはず。
『 ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』(翔泳社)より、意外と言葉で説明されることが少ない「あいさつのルール」を抜粋します。
事例―「あいさつをしたいが、タイミングやルールがわからない」
あいさつの種類が多すぎてどれを選べば良いのかわからない
あいさつはしなければいけないといつも思っているけれど、どのタイミングですればいいのか、どんなあいさつをすればいいのか、いつも迷ってしまう。
昔、勇気を出して同僚に「こんにちは」とあいさつして怪訝な顔をされたのがトラウマになり、ますます言葉が出てこない。
原因―なぜあいさつのタイミングやルールがわからないのか?
日本語のあいさつの複雑なルール
ASDにはコミュニケーションの苦手や、経験から無意識に学んでいく内容に偏りがあるといった特徴がある。
苦手なことから生じる経験不足に加えて、学習内容の偏りもあいまって、暗黙の了解や明文化されないルールというものを知る機会がとても少ない。
そのうえ、日本語のあいさつや敬語には、この暗黙の了解やルールが多い。体系化して教えてもらえる機会がないと、ルールの内容どころか存在も知らないまま社会に出て、失敗体験につながってしまう。
一方でADHDの場合は、その衝動性からマナーやルール通りに行動できない場合がある。あいさつもなくいきなり本題に入ってしまうなど手順を踏まないで行動してしまい、それが修正されないままでいると自分の手順として固定されてしまう。