部屋は散らかり放題、探しているモノは見つからない――。発達障害を持つ人も持たない人も、頭を悩ます「片づけ」。
『 ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』(翔泳社)より、発達障害の当事者が教える、片づけられるようになる「ちょっとしたコツ」を抜粋します。(全2回の1回目/前編を読む)
解決法2―一緒に使うもの同士でまとめる
発達障害の人は、準備しているときに物を探してあちこち動き回ることで、作業が終わるまでにさらに時間がかかる。これは、ADHDの人は、移動中に他のことに気を取られる、ASDの人は、準備することが目的化して、「あれも、これも……」とありとあらゆるものを用意しようと不安になる、ということが関係している。
そのため、あらかじめ 「一緒に使うもの同士でまとめる」 ことが大切だ。たとえば、パスポートや預金通帳、年金手帳といった大事なものは、まとめて同じ場所に保管している人は多いだろう。
それで管理できる人なら、それは「大事なもの」というくくりでカテゴライズされているので問題ない。しかし、このやり方で紛失する場合は、その人にとって「大事なもの同士」と考えてペアにした組み合わせが不適切だったといえるだろう。
海外旅行へ出かけるときは必ずパスポートを使う。そう考えると、人によっては海外旅行のときに必ず使うかばんの中にパスポートを入れておくのが一番適切な収納場所になる。実際、この事例でも、前回はかばんの中から出てきたので、むしろ「海外旅行セット」として一緒にまとめておけば、すぐに探し出せた可能性が高い。
ノートや手帳と一緒に持ち歩けるペンケースやペンホルダーが最近よく文具店に置いてあるのも、「筆記具と手帳やノートは一緒に使うから」という同様の発想だからだし、種類が増えているのはおそらくニーズがあるからだろう。
使うもの同士という発想がピンとこないときには、具体的な状況を想像してみるとよいだろう。筆者は、親戚の看取りを手伝った折、夫に「もしものときはこの引き出しのものを持ってきて!」と依頼できるよう葬儀用に引き出しを作り、
・フォーマルバッグ
・袱紗(袱紗)
・数珠(じゅず)
・白いハンカチ
・装飾品(黒い腕時計や財布、扇子やストール、傘、髪留め、真珠のネックレス)
・香典袋と現金書留封筒(葬儀に参加できないときに香典袋を送る)
をまとめた。
必要に迫られて作ったものだったが、急な不幸という突然の状況では忘れ物をしがちなので、「とりあえずこの引き出しを開ければいい」というパターンを作っておくことでかなり負担が軽減した。家族と暮らす際にも何かを持ってきてもらう、物を貸し借りするというときに「ここから持ってきて」と言えば事足りるため、まずは自分がよく使うものから少しずつ導入するといいだろう。
収納は一緒に使うもの同士で
お酒とつまみ
袱紗や数珠などの葬儀用品
ハサミと紐
スーツケースとパスポート
懐中電灯と電池