夏休みの宿題で、もっとも苦労したのは何かと聞かれて、「読書感想文」と答える人は多いだろう。それはなぜか? 書き方を誰にも教えてもらえないからだ。――現在進行形で読書感想文に苦しむ若者たちを救うべく、この夏、作家の額賀澪さんが、オンラインで90分間の「読書感想文の書き方」講座を開講する。
「悩んでいる人にまず知ってほしいのは、読書感想文は、“本のことを書くのではなくて、自分のことを書く作文”だということ。これに気づくと一気に書きやすくなると思います」
額賀さんが、その極意に気づいたのは小学生のときだったという。
「私も以前は、本のあらすじを原稿用紙2枚くらいにまとめ、そのあとに自分の感想を書いていました。でもあるとき、読書感想文の攻略法を探すために入選した作品をいろいろ読んでみたところ、あらすじではなくて、自分の体験から始まっているものが多かった。それで、担任の先生からアドバイスをもらいつつ、その形式で書いてみたんです」
結果、小学生の額賀さんが書いた読書感想文はコンクールで入選を果たす。
「本の内容を説明しなくていいんだ、こういう書き方が読書感想文なんだって気づきました。そもそも内容を要約することってすごく難しい。そこから本の素晴らしい点を見つけて、論理的に語るとなると、それはもう文庫本についている『解説』のレベルです。読書感想文というと、あらすじをまとめなきゃ、何か高尚なことを書かなくちゃ、というイメージを持っている人が多いですが、そんな難しい入り口から入っちゃだめ! と言いたいです」
必要以上に苦しまずに書くためには、本の選び方も重要だと額賀さんは語る。
「読書感想文が書きやすい本として、よく若い人向けとされる名著があげられますが、普段本を読まない子が楽しめるかというと、かなり難しいと思うんです。本を嫌いにならないためにも、とにかく自分が楽しく読めそうな本を選んでほしい。読書に慣れていない人なら、極端な話、家にあったレシピ本や、『鬼滅の刃』のノベライズを読んだほうが、面白い感想文が書けると私は思っていて。『マンガを読んでいるので、小説もいけるかなって思って読みました』と書き始めてしまえば、マンガを貸してくれたクラスメイトのこととか、印象的だった台詞のこととか、書けることがきっとあるはずです」
読書感想文への抵抗を減らし、本との幸せな出会いの場所に。作家である額賀さんが教える意義がそこにある。
「読書感想文を通して、本を読んだら何か人間的に成長しなくてはならない、と思い込んでいる人もいるかもしれません。でも、読書はもっと軽薄に楽しんでいいもの。この講座で、読書と読書感想文に対するハードルを、ズコンと下げることができたらいいなと思います」
ぬかがみお/1990年生まれ。茨城県出身。2015年『屋上のウインドノーツ』で松本清張賞、『ヒトリコ』で小学館文庫小説賞受賞。16年、『タスキメシ』が青少年読書感想文全国コンクール高等学校の部の課題図書に。大正大学表現学部表現文化学科客員准教授、日本大学芸術学部文芸学科非常勤講師。
INFORMATION
オンライン講座「読書感想文の書き方」
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