リッキーとアンの兄妹が、ひょんなことから滞在することになった「さかさ町」。名前の通り、そこではすべてが「さかさま」。子供は楽しんで働き、大人は遊ぶ。学校に通うのは休日だけで、覚えることより忘れることが大事。買い物をすれば、品物といっしょに値段分のお金がお客に渡される……。そんなユニークな世界を描いた児童文学が、青少年読書感想文全国コンクールの課題図書に選ばれたことをきっかけに、大ブレイクしている。
「挿絵を描いた米国のルイス・スロボドキンは、『百まいのドレス』(『百まいのきもの』を改題)を始め、子供の本の世界では定評のある方です。この本の挿絵もとても魅力的ですが、何よりも内容の面白さに惹かれて、翻訳出版をきめました」(担当編集者の愛宕裕子さん)
原著の刊行は半世紀以上も前で、本国でも古書でしか入手できないという。訳者の小宮由さんは、海外の児童向け書籍を幅広く収集し、そうした隠れた良作を見つけ出す、目利き的な存在だ。
「子供は『おもしろい/おもしろくない』ということに本当に正直ですよね。逆にその大基本さえ間違えなければ、いつ書かれた本であろうが、どこの国の作品であろうが、楽しめるということなんだと思います」(愛宕さん)
子供を夢中にさせるシンプルで奥深い面白さ。大人もぜひ味わってみてほしい。
2015年12月発売。初版5000部。現在5刷13万部