広大なキャンパスに建つレンガ造りの校舎は、細かいところに意匠がほどこされ、カネがかかった建造物だと実感する。
東大構内を歩くと、銅像の多さに気づく。
鹿鳴館、旧古河邸、旧岩崎邸、明治期に相次ぎ代表的建築物を建てた日本建築界の父、ジョサイア・コンドルがすっくと建った銅像。ステッキを手にして腰かける日本初の工学博士・古市公威。東大第3代総長・文部大臣にして、東大正門の意匠、銀杏並木の発案者でもある濱尾新は、脚を組み頬杖をついている。
昔、銅像は功成り名を遂げた成功者にとって勲章とともに最高の名誉とされた。東大本郷キャンパスに銅像が多いのも、日本における権威層を東大が占めている証左であろう。
私が駆け出しの物書き稼業のころ、東大キャンパスである週刊誌のアンケート取材を手伝った。アンケートの質問項目のなかに、セックスに関する質問があったのが気にくわなかったのか、それまで協力的だった関西弁の東大生がいきなり「くだらん!」と言ってアンケート用紙を地面に放り捨てた。
あの東大生、いまごろキャリア官僚として栄耀栄華を極めているのだろうか。
床下から7体の嬰児
文京区のなかでも医者や弁護士、マスコミ幹部が多く暮らすここ白山。
閑静な住宅街が今年(編集部注:2018年)の3月、大騒動に見舞われた。戦前からこの地に建っていた由緒ある邸宅が人の手にわたり、新たに建て替えるとき、床下から16本のガラス瓶のうちホルマリンに漬かった7体の嬰児の遺体が発見されたのだ。1体はへその尾がつき、体長30センチだった。
すわ大量の死体遺棄か?
ホルマリン漬け嬰児というおどろおどろしい報道が世間を揺るがせた。
あの事件から5ヶ月が過ぎ、その後報道はなされていない。事件現場からほど近い瀟洒な一戸建ての主は私の友人であり、メディア界の大物である。
「その事件があった家はある女性が買いましたが、事件後出て行った可能性があります。いまは別の方が住んでいるらしいです。何か複雑な人間関係があったようです」