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 番組が再びかんぽ問題を取り上げるのは、初回の放送から1年3カ月後の2019年7月31日。同年6月下旬の新聞報道で不正問題が脚光を浴び、郵政経営陣が謝罪をしたあとだ。その間にも郵便局員による不正販売は漫然と続き、顧客の被害も拡大した。

現場に知らせず「手打ち」

 クローズアップ現代+の現場も知らないところで、NHK執行部はNHK経営委員会の弾圧に屈し、日本郵政グループと「手打ち」を済ませていた。

 経営委員会から「必要な措置」を要求されたNHK執行部は、会長の上田良一を差出人とする回答文書をつくり、11月6日に郵政側に届けた。専務理事・放送総局長の木田幸紀が日本郵政本社に足を運び、日本郵政上級副社長の鈴木康雄に文書を手渡した。

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 上田の回答文書では、統括チーフ・プロデューサーの発言は「明らかに説明が不十分だったと考えており、誠に遺憾です」とし、その後の自身の対応は「十分なご理解を得るまでに至らなかったことは本意でなく甚だ残念です」と伝える内容だった。

 これを受けて郵政側は翌11月7日、まずは鈴木康雄がNHK経営委あてに文書を送った。

「当グループからのお願いに際し、慎重な調査・審議の後に、執行部に対し、早速に果断な措置を執っていただき篤く御礼申し上げます」

「おかげを持ちまして、昨日、『会長の名代として』専務理事・放送総局長が編成局部長を帯同して、別添の会長名書簡を手交しに参りました」

「貴委員会にても、また執行部にても、十分意のあるところをお汲み取りいただいたものとして、一応の区切りと考える旨を伝えました」

「ただ、会長名書簡だけでは十分ではなく、放送番組の企画・編集の各段階で重層的な確認が必要である旨指摘しました」

 文書では、鈴木が総務省で「かつて放送行政に携わり、協会(NHK)のガバナンス強化を目的とする放送法改正案の作成責任者であった立場」だったと披瀝。「幹部・経営陣による番組の最終確認など、幅広いガバナンス体制の確立と強化が必要である旨も付言致した」とし、「貴委員会も引き続き、強力なご指導・ご監督を賜りますようお願い申し上げます」と結ばれた。

 続く11月13日には、郵政3社長名の文書がNHK会長の上田に送られた。

 文書は「今般いただいた文書をもって一区切りとさせていただく」としながらも、「幅広いガバナンス体制の一層の確立と強化が必要」と注文をつけ、「放送法の趣旨の職員への浸透及びガバナンス体制の確立・強化に関する改善措置の状況」の報告を要求していた。

 NHK執行部はこの要求も受け入れ、2019年2月に木田が再び鈴木のもとを訪れ、職員の研修状況などを説明したとしている。そうした対応もクローズアップ現代+の現場には知らされていなかった。