苦労した分、「自分で頑張れよ」という気持ちが強い父
——家はすごく大きくて立派だけど、そこに住んでいる娘の生活は苦しいというか。貧乏じゃないのを知っているだけに、不条理ではありますよね。
田原 謎でした。「これ(家)、狭くしていいからお小遣い増やして」って本気で思っていた時もありましたね。同級生も我が家がお小遣いに厳しいのは知っていたけど、なぜなのか理解できなくて「カナちゃん家(ち)って、なんでそうなの?」とかよく聞かれました。
中学、高校、大学と私立の高い学費の学校に通わせてもらったので、そこはもちろん感謝はしていますけど。
——お父様が子供の頃に苦労されていたからですかね? 小学校に入ってすぐに父親を亡くされて、生活が大変だったとおっしゃっていますから。
田原 たぶん、そうです。母子家庭ですごく貧しかったみたいで、「プレハブ小屋に住んでた」とか話していました。きょうだいも姉ふたり、妹ひとりで自分以外すべて女だったから、「自分が頑張らなきゃ」みたいな気持ちがものすごくあったみたいです。
20歳でおばあちゃんに一軒家を買ってあげたりしたのも、その気持ちがあったからだと思います。私に対しても「自分で頑張れよ」というのが強くて、仕事でも、お小遣いでも、あらゆる面でそれを感じるんですよね。
——当時の苦労話とかはちょいちょい聞かされる感じなんですか?
田原 ちょいちょい。でも、ピンとこないものが多いんですよ。こないだ、「俺が初めて飼った犬は拾った犬だ」「段ボールに入れられていたチャコだ」と言い出して。こっちとしては犬を拾うという経験がないから「それ、ほんと?」ってなって。でも、頑張ってきたんだろうなって。
——その経済観念や金銭感覚というのは、可南子さんのなかでうまく活かされていますか。
田原 いや、反動で浪費家になっちゃった気がする。私に子供ができることがあったら、それなりに自由にさせるぐらいはあげたほうがいいのかなって思っています。これは、お小遣いの辛い体験があったからこその思いですね。
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撮影=橋本篤/文藝春秋
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