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荻窪で55年続く“常連に愛される中華料理屋” 二代目店主が作る「アツアツのもやしそば」が感慨深かった!

B中華を探す旅――荻窪「光陽楼」

2021/07/15

genre : ライフ, グルメ

note

個人店が踏ん張ってこそ、町の景色がつくられていく

 定休日は基本的に「0」のつく日、つまり10日、20日、30日(例外的に31日も)。珍しいパターンだが、ここにも理由があるようだ。

「曜日で決めちゃうと、お客さんを思い出しちゃうんですよ。『いや、月曜日はあの人が来るなあ、火曜日はあの人が来るなあ』と思うと、切るわけにいかない。じゃあ、もう0で区切りよくしようと」

 でも「仕事は嫌いじゃない」ので、結局は休みの日も調理場にいる。

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「(コロナの影響で)時間制限がかかるとか、アルコール出しちゃダメとか、いろいろあるけど。それはルールとして守ればいいだけであって、そのなかで、自分が培ってきたもので返せれば、それがいちばんいいんだし。町っていうのは個人店がそういう気持ちを持ってやらないとダメになるし、それがチェーン店と個人店の強さの違いですよね。やっぱり個人店が踏ん張ってこそ、町の景色というか雰囲気がつくられていくわけだから。人がいるだけで町ができるわけじゃないし、その人を育てるのも商人の仕事ですからね。やっぱり、どこの町でもルールってあるじゃないですか。そんな気持ちでやってますよね」

 お子さんは、男・女・男・男の4人。しかし、思う存分好きなことをやってくれたほうがいいと考えているため、必ずしも家業を継いで苦労させるつもりはない。だが屈強な印象の重男さんを見ている限り、あと20年くらいは余裕で続けられそうだ。

最後に頼んだラーメンは……

 さて最後に、「本日のオススメ」と書かれているもやしそばを注文した。「はい、わかりました。じゃあ、つくってまいります」と重男さんが席を立ってから数分後、ずっしりと重量感のあるどんぶりが運ばれてきた。

 
 

 もやし、ねぎ、きくらげ、にんじん、肉のあんかけはアツアツだ。火傷しないように気をつけながら食べてみれば、素材の持ち味が口内にぱっと広がっていく。そして、何度食べても感慨深いのが、見た目以上にすっきりとしたスープと、風味豊かな中華麺。昔と変わらない味なので、小学生時代の記憶が蘇ってくるのである。

 とはいえ、決して過去を知る人のためだけの味ではない。初めて食べる人にとっても、重男さんの思いが詰まった一杯はきっとおいしい。心が込められていることがわかる味だからだ。

 

撮影=印南敦史

INFORMATION

 光陽楼
 東京都杉並区天沼3-12-7
 営業時間 11:30~15:00(L.O.14:30)、17:30~23:00(L.O.22:00)
 定休日 10、20、30、31日

 ノンアルコールビール 400円
 餃子 500円
 もやしそば 800円

荻窪で55年続く“常連に愛される中華料理屋” 二代目店主が作る「アツアツのもやしそば」が感慨深かった!

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