JR中央線の荻窪駅北口を出たら、目の前の青梅街道を向こう側にわたり、新宿とは反対方向に進むこと10分弱。青梅街道と環状8号線が交差する四面道交差点の手前に、日大二高通りという片側1車線の小さな通りが現れる。
そこを右折するとすぐ右に見えてくるのは、レンガのタイルが貼られた古い建物。ガラスの入った茶色い木枠の引き戸も、独特の年季を感じさせる。バス停を模した看板に書かれた「中華」という文字を見落としたら、中華料理店だとは気づかず通り過ぎてしまうことになるかもしれない。
地元民から愛される“B中華”
だが、そんな独特な雰囲気こそが、いかにもB中華なのだ。しかもこの店、マスコミで紹介される機会は少なく、流行りの町中華ブームにも左右されない。なのに、お昼のピークを過ぎてもぽつりぽつりと人が出入りする。つまり「光陽楼(こうようろう)」という名のこの店は、地元に根ざした、地元民から愛される存在なのである。
入り口はなぜか北国の住宅のような二重扉になっており、店内に足を踏み入れると4人席が右に3卓、左側にも4人席と6人席。突き当たり奥が厨房で、カウンター席はなし。スペースには余裕があるが、中華料理店風ではない。
天井のつくりなど日本風でもあり、なんとも不思議な雰囲気なのだ(その秘密はのちほど)。
まずはビールに餃子だ!
ともあれ、まずはビールに餃子だ。と思ったものの、注文すると奥様から「すみません、いまビールはお出しできなくて……。ノンアルコールビールの小瓶ならあるんですけど」との返答が。
あっ、そうか。考えてみると、お邪魔したこの日は緊急事態宣言のまっただなかなのであった。思うところはいろいろあるが、お店に責任はないし、国が決めちゃったことなのだから仕方ない。
そこでノンアルコールビールと餃子で、ゆったりと流れていく空気を楽しむことにする。
時刻は13時半。奥の席では40代くらいのカップルが向かい合ってラーメンを、反対側の席ではサラリーマン風の男性が定食を食べている。突き当たりの天井近くにあるテレビは、ニュース番組を映している。