7月14日、第165回芥川龍之介賞と直木三十五賞(いずれも日本文学振興会主催)の選考会が東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は石沢麻依さん(41)の『貝に続く場所にて』(群像6月号)と李琴峰さん(31)の『彼岸花が咲く島』(文學界3月号)、直木賞は佐藤究さん(43)の『テスカトリポカ』(KADOKAWA)と澤田瞳子さん(43)の『星落ちて、なお』(文藝春秋)がそれぞれ選ばれた。

合計4名が受賞者に

 石沢麻依さんは、1980年宮城県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。2021年、「貝に続く場所にて」で第64回群像新人文学賞を受賞しデビュー。芥川賞は初のノミネートだった。

 李琴峰さんは、1989年12月26日台湾生まれ。中国語を第一言語としながら、15歳より日本語を学習。また、その頃から中国語で小説創作を試みる。2013年、台湾大学卒業後に来日。15年に早稲田大学大学院日本語教育研究科修士課程を修了し、16年民間企業に就職。17年、「独舞」にて第60回群像新人文学賞優秀作を受賞しデビュー。18年末に勤務先を退職。19年より独立起業し、以来、作家・翻訳家・通訳者として活動。芥川賞は、2回目のノミネートだった。

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石沢麻依さん(左)と李琴峰氏さん(右/©大坪尚人)

 佐藤究さんは、1977年9月13日福岡県福岡市生まれ。福岡大学付属大濠高等学校卒。2004年、佐藤憲胤(のりかず)名義の『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、同作でデビュー。直木賞のノミネートは今回が初めてだった。

 澤田瞳子さんは、1977年9月14日京都府京都市生まれ。同志社大学大学院文学研究科博士課程前期修了。奈良時代仏教制度史、正倉院文書の研究を経て、2010年『孤鷹の天』でデビュー。直木賞は、5回目のノミネートだった。

佐藤究さん(左/©山口宏之)と澤田瞳子さん(右)

 芥川龍之介賞・直木三十五賞は、菊池寛(明治21年~昭和23年)が昭和10年に制定したもの。芥川賞は雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)のなかから、最も優秀な作品にそれぞれ贈られる。正賞は懐中時計、副賞は100万円。

 現在の選考委員は、小川洋子・奥泉光・川上弘美・島田雅彦・平野啓一郎・堀江敏幸・松浦寿輝・山田詠美・吉田修一の各氏(芥川龍之介賞)、浅田次郎・伊集院静・角田光代・北方謙三・桐野夏生・髙村薫・林真理子・三浦しをん・宮部みゆきの各氏(直木三十五賞)が務めている。

写真提供:日本文学振興会

■第165回芥川龍之介賞 候補作(掲載誌)※作者五十音順・敬称略

石沢麻依「貝に続く場所にて」(群像6月号)
くどうれいん「氷柱の声」(群像4月号)
高瀬隼子「水たまりで息をする」(すばる3月号)
千葉雅也「オーバーヒート」(新潮6月号)
李琴峰「彼岸花が咲く島」(文學界3月号)

■第165回直木三十五賞 候補作(出版社)※作者五十音順・敬称略

一穂ミチ「スモールワールズ」(講談社)
呉勝浩「おれたちの歌をうたえ」(文藝春秋)
佐藤究「テスカトリポカ」(KADOKAWA)
澤田瞳子「星落ちて、なお」(文藝春秋)
砂原浩太朗「高瀬庄左衛門御留書」(講談社)