「悪い面は全部、先に出します、人前で」
さんまの楽屋トークのおもしろさは、東京の番組でも共演者やスタッフから評判となっていた。
「秘密を作るな。恥ずかしくても、不恰好でも、すべて世間にバラしてまえ。隙だらけにしておくと楽になるぞ」
さんまはこの松之助の助言に従い、これまで表舞台ではオブラートに包みながら話していた恋愛話や私生活での失敗談、仲間たちとの内輪話などを、どのような場所でも、脚色を交えながらなんでも話すようになっていく。
さんま「自分は菊なんだ、花なんだと飾っても、どうせ枯れていくのやから。いつまでも自分がドライフラワーのようにカッコつけても、しゃーない。悪い面は全部、先に出します、人前で。カゲ口をたたかさんように、自分でさらけ出してしまう。これは師匠がそう生きてきたっていうことだったし。自分もそういうふうに出せばラクなんですよ」(「MORE」1982年11月号)
ビートたけし「さんまは芸より人柄だね。番組の中より、楽屋のほうが面白いんですから」(同右)
さんま「開き直りましたんや。芸人やから私生活のことも放っといてもらえん。そんならぜーんぶ喋ってしまおう、それが芸人のサービス精神ちゅうもんやと」(「週刊現代」1983年3月5日号)
「さんまさんの情報収集能力はすごいですよ。あの人に盗聴器はいらない」
横澤彪(『オレたちひょうきん族』プロデューサー)「彼の大阪での評価は非常に低かったんです。さんまは芸なしだ、なんていわれてね。(中略)とにかく楽屋話がめちゃくちゃ面白い。ちょっと差し障りがあるんで名はいえないんですが、芸人としての序列の最高のところにいる人について、それをバカにするような話をふくらませたり、創作したりしてしゃべるのが実にうまいんです。その面白さが高座ではちっとも出ないんですね。ボクははじめて彼の楽屋話を聞いたとき、これは凄い才能だと思った」(「週刊現代」1985年1月19日号)
太平シロー「さんまさんの情報収集能力はすごいですよ。あの人に盗聴器はいらない。ありふれた世間話をしているだけなのに、いろんな人のことを何でもよう知っている。その事実を原形に、うまいことネタをこしらえるんです。『嫁はんがよう寝る』とひと言しゃべっただけでさっそくネタにされて、いつ行ってもシローの嫁はんは寝ている、シローがついにキレて寝ている嫁はんを引きずり回したと、そういうことになっている。でも、さんまさんの作ったネタはよくできていて、長く使えるからおいしい」(「アサヒ芸能」1999年9月2日号)