〈スキーマとは、人の認知、感情、行動などを規定する、強固な価値観のこと。スキーマ療法では、幼少期の有害な体験からつくられた「早期不適応スキーマ」に焦点をあて、認知の変容をめざします。従来の認知行動療法が効きにくいパーソナリティ障害、対人関係の問題を抱える人などでとくに有効です〉(お茶の水女子大学教授・岩壁茂[監修]『よくわかる臨床心理学』(ナツメ社)より)
18種類のスキーマは、大きく(A)人との関わりが断絶されること(1~5)、(B)「できない自分」にしかなれないこと(6~9)、(C)他者を優先し、自分を抑えること(10~12)、(D)物事を悲観し、自分や他人を追い詰めること(13~16)、(E)自分勝手になりすぎること(17~18)の5つの領域に分けることができる。
これらの中から自分に当てはまるスキーマを選定し、「そういった思考パターンを持つに至った原体験は何か」「当時、本当はどうしたかったか、どうしてほしかったか」を整理しながら、ひとつひとつ向き合っていく。そして、ストレスとのうまい付き合い方を身につけ、心のバランスを取れる状態を作っていく。
スキーマ療法により、自分の意思でコントロールが可能に
この1年間、心理士のもとで思考パターンそのものの変化を続けていたが、私にはこの治療法が合っていたようで、自分でも驚くほどの変化があった。気分が落ち込んだり悲観的になって仕方がないとき、これまではただそれが去るのを待つしかできなかったのが、自分の意思で、脳内から「悪い思考」を追い出すコントロールができるようになったのだ。
また私の場合、自分の中にある「モヤモヤ」や「生きづらさ」のような概念が言語化され、「○○スキーマ」と名前が与えられたことで、それが「自分だけが苦しんでいる名も無き感情」ではなく「精神医学的に見ても誰もが抱えうる、人間として正しい反応」なのだと理解し、自分の持つ「生きづらさ」を幾分か受け入れやすくなった。ストレスを感じたとき、「今は○○スキーマが暴れているんだな、こういうときは無理せず楽しいことをしよう」と考えてその場をしのげるようになったのは、自分にとって大きな財産だと思う。
他にも、これまでは他者から理不尽に傷付けられたとき「自分に原因があるんだろう」と考えて、自分を徹底的に責めてしまっていたのが「自分は悪くない」と思えるようになったり、そもそもそれが「理不尽だ」とはっきり気が付けるようになったりなど、思考パターンそのものの変化も見られた。(後編に続く)