スイーツ好きの猛虎戦士
でも、どちらも結局は「間接的な理由」にすぎません。
大和選手が両チームファンから支持されるのは、結局「人柄」ではないかと思います。
では、大和選手の最大の魅力とは何か。
それは「ギャップ萌え」だと、私は思うのです。
はっきりいってタイガース時代の大和選手は怖い印象がありました。
外見はどちらかというとコワモテで、ここぞという場面でファインプレーを決めても、表情一つ崩さないクールさ。
なにより印象的なのは甲子園に響き渡る大和選手のかっこいい応援歌の、勇ましい歌詞でした。
「行け、猛虎戦士、大和」「戦え大和、お前の使命」
自分に厳しく、人に厳しく。常に表情を崩さない「いぶし銀の猛虎戦士」。
そんな印象は、比較的早くガラッと崩れました。
中でもアレだったのが、移籍1年目の『横浜ウォーカー』の企画で、濵口遥大投手と一緒にマリーンルージュ(横浜港で運航している、デートニーズが中心のクルーズ船)に乗るという謎の記事でした。
海と夜景を見つめながら、濵口投手にすてきな笑顔を見せる大和選手。
さらには、「実はスイーツ好き」とカミングアウト。
こちらが勝手に「いぶし銀」だと思っていただけに、そのギャップは破壊力抜群でした。
ベイスターズにおけるギャグの切り込み隊長・佐野恵太キャプテンのどうしようもないネタにまっさきに大爆笑してくれるのも、常に大和選手です。
そのたびに、つくづく痛感するのです。
「ああ、これがギャップ萌えか」
でも、もちろん大和選手のそんな魅力に気づいていたタイガースファンは山ほどいたわけで、『月刊タイガース』2013年4月号では、ファンの子供記者が大和選手にインタビューするというほほえましい記事が載っています。インタビューの中で大和選手は「好きなものはショートケーキ」とギャップをくすぐる発言をしています。
ちなみにインタビュアーの一人の中2の女の子は「タイガースファンになったきっかけが大和選手」という渋い発言をしていましたが、今、どうしているのでしょうか。
タイガースファンの方に言わせると、大和選手はいまだに「若トラ」のイメージなんだそうです。
そんな「若トラ」が、なぜか横浜でベテランとして活躍している。これもまた「ギャップ」なのではないかと思います。
空に輝くドローンと、あの日の大和選手と
2021年7月23日、オリンピック開会式で話題となった、ドローンが空中に地球を描くという演出。
空に浮かび輝くドローン群を見て、なぜかふと、大和選手のことを思い出しました。
あれは2018年3月30日、セ・リーグの開幕戦でのことでした。
11年ぶり、つまりDeNAになってから初めてのホームでの開幕戦(その意味は推して知るべし)を迎えた球団は、はたから見てもどうも浮足立っているようでした。
そんな記念すべき年に球団がオープニングセレモニーとして選んだのが、オリンピックと同様のドローンによる演出。
輝くドローンたちが空に様々な模様を描く様子は圧巻でしたが、その間、選手はずっとグラウンド内に立ちっぱなし。3月の寒空の下、選手たちが冷えてしまわないかと他人事ながら心配していたものです。
そしてやっとプレイボール。
スワローズの先頭打者、山田哲人選手の打った打球はショート方面への平凡なゴロ。その先にいるのは、移籍早々開幕スタメンの大和選手。
早速「守備の名手」のグラブさばきが見られるぞ、という我々の期待の中、なんと大和選手はボールを取り損ね手前にポロリ。慌てて拾いなおすも一塁セーフ。
スコアボードにこうこうと輝く「E」の文字。唖然とする我々。つい口をつく「ようこそ、ベイスターズへ」という自虐的な一言。
しかしこれもまた、その後幾度となく見せてくれた華麗なプレーを演出する、大和選手の「ギャップ」だったように、今なら思います。
スイーツ好きの猛虎戦士。
ベテランなのに永遠の若トラ。
いぶし銀なのにまぶしい笑顔。
そして、華麗だけれどたまにやらかすちょっとしたポカ。
これからも、大和選手のそんなギャップから目が離せません。
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