藤井聡太二冠の活躍を始めとして、若手優位が言われている現在の将棋界だが、第69期王座戦では、挑戦者決定戦が佐藤康光九段VS木村一基九段のベテラン対決となり、注目を集めている。

 中でも、今期の王座戦で目を引いたのがベスト4まで勝ち進んだ飯島栄治八段だ。現在41歳の飯島は、棋界では実力者として認められているが、これまでにタイトル獲得歴があるわけでもなく、世間的な認知度が高い存在とは言いにくい。

 将棋棋士は一般的に40代を迎えるころには成績が下り坂になるとされている。これは過去の棋士を見てもそうであり、飯島自身もここ数年は成績が下降気味だった。だが、昨年度は自身のキャリアハイとなる成績(32勝13敗=勝率0.7111)をたたき出し、王座戦におけるブレイクに結びつけた。

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 また飯島にはオンライン上におけるいじられキャラとしての側面がある。「凄くないですか?」は、飯島が大盤解説などでよく使うキーワードだが、それと自身の段位に引っ掛けての「凄八」がインターネットスラングとは言え、本人も認めるあだ名になっている。

 いじられキャラとしての「凄八」と、棋士・飯島栄治の双方の姿について追っていきたい。ご自宅の研究部屋にてお話をうかがった。

飯島栄治八段

「叡王戦どうされましたか?」 村山慈明七段と因縁対決の裏側

――本日は木村一基九段書の掛け軸が掛けられている、飯島さんの研究部屋へお邪魔しての取材となりました。

飯島 僕なんかがインタビューされていいんですか?

――いえいえ。まずは最近の飯島さんが、特にオンライン上でバズっている、その状況についてお伺いしたいと思います。

飯島 「凄くないですか?」ですよね。これは最初に言ったのがいつでしたかね。ドワンゴさんやABEMAさんのおかげで動画中継が充実してからですから、10年も経っていないとは思います。そもそもは「凄」よりも、弟弟子との因縁のほうが先でしょう。

――村山慈明七段の「叡王戦どうされましたか?」ですよね。

飯島 あれ、言われたのがまさにこの場所なんですよね。ご存じない方に説明すると、5~6年ほど前に僕と村山、そして深浦先生(康市九段)と木村先生で研究会をやっていたんですよ。研究会と言っても将棋を指すだけなんですが、まずは深浦―木村と、飯島―村山という組み合わせに。