――棋士としての木村九段はどのように見ていますか。
飯島 希望ですよね。木村先生があの年齢で勝ってくれるなら、まだ自分もやれるのではないかと励みになります。そういう意味では、藤井二冠の将棋は見てもあまり参考になりません。自分が19歳には戻れませんから。木村先生以外にも羽生先生(善治九段)をはじめとする少し年上の先輩が、今の若手とどう戦うかということを参考にしています。
「大記録のアシストばかりですよ(笑)」
――今の棋譜用紙は1枚で150手まで書けますが、昔は80手まででした。飯島さんはその記録用紙をご存知でしたか。
飯島 当然、その紙は知っていますが、自分が記録を取った時はもう150手のほうだったかと。私が奨励会に入ったのは1991年ですが、その当時は記録係が3枚の手書き棋譜を提出する必要がありました。今はタブレットがあるので1枚です。自分が棋士になったころだったかな、2枚の時代もありましたね。
――当時の思い出を教えてください。
飯島 奨励会に入る直前ですが、大山先生(康晴十五世名人)を生で見て感動しましたよ。昔は牧歌的というか、今とは全然違いますよね。例えば対局室にカメラが入ることはまずなく、またベテランの先生が多かったこともあって、午前中なんか将棋そっちのけでしゃべっていた感じです。師匠(桜井昇八段)もその一人です。
――どんなことを話されていましたか。
飯島 近況報告みたいなものです。「体、大丈夫?」「50歳になったらやばいよ」など。まだ50にはちょっとありますが、当時の師匠の気持ちがわかり始めてきました(笑)。あと、雑誌を読みながら指していた棋士もいて、こっちも若いから思わずカッとなって負けそうになったこともあります。
僕が指した棋士で、一番ご年配の方は関根先生(茂九段)ですね。あと有吉先生(道夫九段)との対局もあります。中原先生(誠十六世名人)、米長先生(邦雄永世棋聖)、内藤先生(國雄九段)と指せなかったのは惜しかったです。加藤先生(一二三九段)とは5局ありますが。
――有名な対局がありますね。
飯島 加藤先生が現役最高齢勝利を上げた一局ですね。記録の立会人になるとは思わなかったです。王座戦で佐藤先生が挑戦すると、現役会長のタイトル戦は三十数年ぶりとかで、大記録のアシストばかりですよ。これって凄くないですか?(笑)
写真=平松市聖/文藝春秋