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40代に入ってからキャリアハイを更新できた理由

――改めて、40を迎えてからも勝てていることについてどうお考えですか。

飯島 数年前に体を壊して、対局前日にもかかわらず眠れないという時期がありました。当時の勝率は4割ほどですが、それでもよく勝てていたと思います。もう終わりかと思っていましたが、原因がわかり、いい先生にも恵まれて、改善できたのがよかったです。僕以外でも、体を壊さなければもっと勝っている人は多いと思います。

――他の要因に関してはいかがでしょうか。

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飯島 勝てるようになってやる気が出てきましたね。あとは現在のコロナ禍で仕事がなくなった結果、将棋の研究に打ち込む機会が増えたのは皮肉とは言え大きいと思います。

 技術的なことを言いますと、最近の流行戦型の一つに相掛かりがありますが、僕は流行前から指していたので、先乗りができていたのはあります。相掛かりに限らず、新手を探す、序盤での新しい作戦を探すのが好きなんですよ。横歩取りの青野流対策と相掛かりの研究で、1日が終わってしまうこともありますね。昔は中終盤で垂れることも多かったですけど、最近は逃げ切れるようになりました(笑)。

 あとは村山のおかげと書いておいてください。関西に行ってからは直接会う機会が少なくなったのが残念ですが、ネットのVSで教わっているので。

――普段の取り組み方で変えた部分はありますか。

飯島 将棋ソフトの有無も含めて、以前とはまったく変わっていますけど、それがよかったのではと思っています。例えば、以前の勉強方法として棋譜並べがありますが、今の時代に棋譜並べをやっても、過去のデータを追うだけなのであまり参考になりません。結局は実戦なんですよね。やはり若手との研究会が大きいです。そういう時に知識で対抗せず、自分の独自性を生かすほうがいいのではというのが今の気持ちです。

――前年度成績の32勝13敗、勝率0.7111はその結果でしょうか。40代に入ってからのキャリアハイは凄くないですか?

飯島 年間45局はほぼ週1ペースです。以前の最高が42局ですけど、3局の差は大きいですね。あと前年度については、朝日杯で公開対局を経験できたのはよかったと思います。慣れないことばかりで大変でしたけど、これは40過ぎまで公開対局を経験できなかった自分が悪いので仕方ないです。

6月25日の王座戦、惜しくも敗れてベスト4に終わった対佐藤康光九段戦 ©相崎修司

――最後に、王座戦を振り返って改めて一言を。

飯島 準決勝は佐藤ワールドを抜け出せずガス欠になってしまい、自分が至らなかった一局です。ただ、朝日杯の豊島さん(将之竜王)との一戦とは異なり、大一番の前に眠れなかったということはなかったですね。

――ところで、研究部屋の掛け軸には、佐藤九段に書いていただいたものをあるんですよね。挑決はどちらを応援しますか?

飯島 負かされた相手と戦うかもしれなかった相手ですよ? どっちかに肩入れするのも変ですよね。具体的なコメントは勘弁してください(笑)。

木村一基九段(左)と佐藤康光九段(右)の直筆サイン入り扇子を手にする飯島八段

写真=平松市聖/文藝春秋

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