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「LGBTQを一種のムーブメントとして描くのは、私の漫画は違うかなと」 人間の“グラデーション”をおかざき真里が感じた、小学3年カナダでの“経験”

おかざき真里さんインタビュー#2

2021/07/30
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 広告代理店で働く女子のリアルを描いた『サプリ』(祥伝社)や、派遣社員とネイリストのダブルワークをテーマにした『&(アンド)』(祥伝社)など、時代の流れを先読みし、女性の生き方を映し出してきたおかざき真里さん。

かしましめし』(祥伝社)では、「食べること」をテーマに、美大の同級生である男女3人のシェアハウス生活や、LGBTQフレンドリーを鋭く切り取っている。今回、主人公の1人がゲイであることにどのようなメッセージを込めたのか。(全2回の2回目。前編を読む)

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みんなでわいわいご飯を食べる

──宇多田ヒカルさんが「ノンバイナリー」であることをカミングアウトされるなど、性自認や性的指向の多様性が広がっています。このような時代が来ると以前から考えていたのですか。

おかざき真里(以下、おかざき) 時代の先取りとかトレンドをつかむということはまったく考えていませんでした。

 そもそも、『かしましめし』を描くきっかけになったのは、実際にいる知人の「ゲイの男性と2人の女性の3人共同生活」が楽しそうで羨ましいな、と思ったからなんです。私のすごく仲のいい友人が、よく一緒にご飯を食べていると聞いて、私もご一緒させていただいたのですが、本当に楽しくて。みんなでわいわいご飯を食べるってやっぱりいいなと思って、そこから構想がふくらんでいきました。

©おかざき真里/祥伝社フィールコミックス

いちばん伝えたかったことは

──『かしましめし』で、いちばん伝えたかったのはどんなことですか。

おかざき 英治は前述したモデルになった人にならってゲイという設定ですが、千春もナカムラも性的には「女子ど真ん中」からは少しずれているというつもりで描いています。

 最近とくに感じるのは、私もそうですが、セクシャリティひとつとっても、みんなグラデーションのなかで生きていて、白か黒のどちらかにわけられるものではないのが人間そのものだと思っています。仕事でも、千春はいま会社を辞めて所属がはっきりしない状態で、ナカムラは以前の花形部署から外されて会社の中で宙ぶらりんな状態だし、英治は美大を出たのにデザイナーではなく営業をやっているという、“グレーゾーン”の状態にいる3人を描いているつもりです。