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先の見えない下り階段

 渡り廊下を抜けるといよいよ、462段ある長い階段へとたどり着く。上から見ると階段は一直線に下へと伸びているが、あまりの段数の多さで先が見えず、不安と恐怖で身震いする。しかし、下の方から話し声が聞こえる。登山客が階段を上ってきているようで、少しホッとした。

ホームへと続く土合駅階段

 長い階段をいよいよ下りていく。階段にはところどころ段数が書いてあり、どれくらい進んだか目安がわかる。5段ごとに踊り場が設けられており、タンタンタン…とリズムよく下りる。階段は緩やかな傾斜で下りやすく、意外と余裕かもしれない。トンネルの壁にはコケが生え、地下水が滲み出ている。照明に照らされると妙に幻想的で美しい。このような異空間に、心惹かれ癒やされる。

階段に記された「段数」

 薄暗く湿った階段を一歩、また一歩と軽快に進んでいく途中、ふとあることに気がついた。

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 問題は帰りじゃないのか? 下りより、帰りの上りじゃないか? 下りたら上らなければ帰れないだろう。下りたら電車に乗るのか? いや、ここまで車で来たのだった。

 下りた分だけ上る階段の数が増えていくことに戦慄する。

 そういえばのどが渇いてきた。ペットボトルを車に置いてきたことを今更ながら思い出す。

 それと同時にトイレにも行きたくなってきた。緊張が走る。どうしたものか。今さら引き返すか? ここまで来たが。早くホームまでたどり着きたい。好奇心に駆られる。ゴールが見えてきた。あと少しだ。

やっとホームが見えてきた……

 時計を見ると、改札の時点から10分が経っていた。下りてきた階段を見上げると、頂上がとてつもなく遠くに見える。途中ですれ違った登山客はいなくなり、いつの間にか私ひとりになっていた。静寂が恐怖心を煽る。