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ブレッソンの写真は誰が見てもすごい

─賀屋さんの写真をたくさん撮られてますよね。お2人は本当に仲がいいなと思います。

加賀 もともとはスナップや風景を撮るのが好きだったんですけど、芸人が一般の方を撮るわけにはいかないので、最初の頃は賀屋ばかり撮っていました(笑)。最近はいろんな芸人さんを撮っているんですけど、潜入捜査官みたいなつもりで、その人の舞台裏というか、人間としての活動を切り取るつもりでやっています。だから、距離の近い人の方が絶対にいい写真が撮れます。

 

──写真集『決定的瞬間』で世界に多大な影響を与えた、アンリ・カルティエ=ブレッソンが好きとお聞きしました。写真のどんなところが魅力ですか。

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加賀 ブレッソンは偉大な写真家ですが、「みんなが好き」というダウンタウンさんみたいな魅力がありますよね。僕だからとか、写真が好きとか嫌いとか関係なく、誰がみてもすごいと思うし、いいなと思う。おこがましいですが、僕はコントを考えるときに、言葉ではなく見た目で考えているところもあるので、そこはちょっとブレッソンの世界観に通じる部分があるのではないかと思ったりしています。図々しいですが。

文章を書く仕事は「すみません」くらいの気持ち

──ブレッソンは「写真は短剣のひと刺し。絵画は瞑想だ」という言葉を残しています。この言葉は見事に俳句の「写生観」を表していると思いますが、加賀さんが俳句をされているのも、ブレッソンの影響ですか。

加賀 俳句を書いているのは、ピースの又吉さんの影響です。又吉さんの共著『まさかジープで来るとは』(せきしろ、又吉直樹 幻冬舎文庫)という自由律俳句集を読んで、「俺が面白いと思っていることはこれ!」と、感動して、そこから自分でも自由律俳句を書いたり、又吉さんがおすすめする本を読みあさったりしました。

 

 おかげさまでいま、文章を書く仕事も少しずつさせていただけるようになったんですが、文章はコントや写真と違って、相手がどんなペースで読むか、どの順番で読むかをコントロールできないので、めっちゃ難しいです。

 でも、今年1月に芥川賞を受賞された宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』を読んだときには、1ページ目で圧倒的絶望感を感じました。集中して読もうとか何の努力もしていないのに、映像が頭に浮かんでくる文章は、自分が「文章は難しい」とか言っていたのが恥ずかしくなるくらいでした。だから文章を書く仕事をいただくときは、「自分にできること精一杯やりました。すみません」くらいの気持ちでやっています。

 宇佐見りんさんには絶対敵いませんが、17音までだったらがんばれるかな……。写真と俳句と組み合わせて、というのもいつかできたら楽しそうですよね。

 

──では来月から、「加賀翔の“決定的瞬間”」というタイトルで、写真と俳句の連載をお願いします(笑)。

加賀 ああ、余計なこと言っちゃった(笑)。あと10年経てば、いろいろなことが気にならなくなって、自分のなかでも10%くらいの人に向けて書けるようになれると思うので、10年後にまたオファーお願いします(笑)。

(取材・構成:相澤洋美、撮影:山元茂樹/文藝春秋)

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