まだまだCDでやれることもある
カツセ CDの存在意義が、10年前とはかなり変わっちゃいましたよね。
Ayase まったく違いますよね。だからこそ、僕らがCDで1stアルバム『THE BOOK』を出したときは、モノを買ってもらうことにちゃんと価値を見出してあげないといけないなと考えていました。
カツセ YOASOBIファンは、CDプレーヤーを持ってない人ばっかりなんじゃないですか?
Ayase そうだと思いますよ。僕も純粋なCDプレーヤーは持ってないですし。
カツセ え? 本当ですか?
Ayase 以前に使っていたMacBookにディスクドライブがついていて、もうそれでしか聴けないです。『THE BOOK』は、モノは買ったけどCDで聴いていないという人がいっぱいいると思うんです。だから、手にしたときに「わー!」っと喜んでもらえるような「宝物感」を与えられるようにすごく力を入れました。サブスクの時代になっても、モノに触れる価値は変わらないし、CDのレア度は上がっていますから、非日常的な体験をいろんな形で提供できるよう、まだまだCDでやれることもあると思っていますね。
ジャケ買いで「いつか読もう」と思ってくれるだけでも価値はある
カツセ 小説のいいところは、手にした人の嬉しくなる顔が見える気がするところだと思うんです。「買ったけどまだ読んでないです」ってSNS上で言われて、わざわざ言うなよ~とも思うけど(笑)、それですら嬉しい。装幀やタイトルが気に入ってジャケ買いして本棚に入れてくれたり、いつか読もうって思ってくれたりするだけでも、価値はあります。そもそも本屋さんがどんどん少なくなってきて、売れる小説も本当に一握りでしかない時代で、どうやって小説を書いて読者に届けていけばいいのか、いつも悩みますし、すごく考えています。今、NETFLIXとか、本当に面白いじゃないですか。昔は存在しなかった競合相手と戦っていかなきゃいけない時代なんですよね。
Ayase なるほど、そうですよね。
カツセ いろんなコンテンツで可処分時間の取り合いになっているから、じっくり本を読んでくれる人がどれだけいるかはいつもすごく不安です。『夜行秘密』の発売時期に『全裸監督2』が始まったけど大丈夫だろうかとか、そういった不安を抱えなきゃいけない(笑)。だからこそ小説に関しても、僕は音楽の売り方や見せ方を参考にしています。好きなアーティストのインタビューを読んだり、リリースタイミングの動き方を見たりして、「なるほど、そういうふうに出したらいいのね」「そういうプロモーションもありなのね」って学ぶことが多い。そんな自分だから、小説という表現をどれだけ他のエンターテインメントと同じように見せられるかは、1作目からかなり意識していましたね。