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カルチャー誌を席巻した“カリスマ”・市川実日子の姉が5年ぶりに…売れっ子姉妹が歩む、異なる「道」

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2021/08/01

「市川実和子ってこんなに魅力的な俳優だったんだ」と、先月に公開された映画『青葉家のテーブル』の劇場で、驚くような思いでスクリーンを見つめていた。

『青葉家のテーブル』は、もともとは映画ではなく『北欧、暮らしの道具店』というインテリアメーカーのサイトで配信されたWEBドラマである。

 西田尚美が演じる母・青葉春子と、学校に不適応な中学生の息子リクと、シェアハウスで同居する血の繋がらない母の友人たちが送る静かな、しかし確かなメッセージをもった日々を描く十数分の連作短編ドラマは、家具メーカーのWEB広告の一環として作られたにも関わらず、優れた内容に各話100万再生を超える反響を呼び、映画として特別編が作られるようになった。

市川実和子 ©️時事通信社

市川実和子は、90年代、どのような存在だったのか

 市川実和子はWEBドラマ編には出演しておらず、その映画版にキャスティングされたゲストということになる。彼女が演じるのは営業する店やライフスタイルがSNSで話題を集めるインフルエンサーの女性、国枝知世だ。映画版で登場する知世と、ドラマ版で西田尚美が演じるリクの母、青葉春子には、かつて青春時代をともに過ごし、そしてある理由で決裂した過去がある。

 伊藤万理華主演のドラマ『お耳に合いましたら。』が話題を集め、映画『サマーフィルムにのって』の公開も控える松本壮史監督が脚本も手がけるこの映画は、90年代にもつれてしまった文化の糸を、2021年にゆっくりと解きほぐすような内容になっている。

 この映画が描くものは、社会の中でインフルエンサーとフォロワーに分かれてしまった2人の女性の再会と和解であり、それは同時に90年代に分断された社会と文化についての寓話でもある。松本壮史監督はCMやMVなどといったコマーシャルな作品を手がけてきたことで知られているが、作家的な本質はストーリー、脚本に強い根幹を持った映画監督だと思う。

 市川実和子が演じるインフルエンサーと、複雑な感情を抱きつつ彼女をフォローする西田尚美の演じる母親は、物語の中で再会し、過去のわだかまりについて話し合う。それは90年代論でもあり、一種の市川実和子論にもなっているように見えた。