文春オンライン

2021/08/13

 そんな話をしながら缶コーヒー並べて、「どれか好きなのを飲め」って言われて。1本いただきながら、「ここでアルバイトせぇへんか? 15分犬の散歩行ったら15万円あげる」と言われたんですよ。「15分の犬の散歩が終わったあと、俺と関西弁でいろんな話をしよう。関西弁が久しぶりやから」みたいな話をされるんですよ。「わかりました、じゃあちょっと1回寮に戻って寮の先生に聞いてみます」ということで、戻って寮の先生に聞くと、めちゃくちゃ怒られまして(笑)。「欲を捨てるためにお坊さんを頑張ってるのに、お前はそんな楽してお金儲けるとは何事や」って言われて。当時、反省文を原稿用紙4枚くらい書いて、“私は危うく欲にやられところでした”みたいなことをみんなの前で読みましたね。

三木大雲住職 ©文藝春秋(撮影・宮崎慎之輔)

 それで次の日に(社長に)謝りに行ったんですよ。「すみません、バイトはできません」と。そしたら「あぁ、そらそうか、お前お坊さんの修行してたんか。わかった、もう仕方がないから頑張れよ」みたいな。そこでもまた缶コーヒー出してくれはるんですよ。そしてコーヒーを飲みながら関西弁で会話をして。それで「ありがとうございました。失礼します」ということで帰ったんですね。

 熊谷の修行は2年間で、残りの2年は、東京の谷中に寮がまた別にあるんですけど、そこに引っ越すので、また(社長に)挨拶に行ったんですよ。すると、「おお、入れ入れ、コーヒー飲め飲め」と言って、また(缶コーヒーを)何本か並べてくださって。1本いただきながら、「実はもうこれで熊谷の修行が終わります。次はまた新たに2年間、谷中というところに修行に行きますんで」と言うと、「あぁ、そうかそうか。ほんならまたどっかでお前と会えたらええなぁ」と。「じゃあ失礼します」と言ったら、「おう、ちょっと待て待て。もう1本飲んでいけ」って言わはるんですよ。私はもうお腹いっぱいだったので、「いやもう大丈夫です。またじゃあどこかでお会いできたら良いですね」と言って、そのまま帰ったんですね。

光照山 蓮久寺 ©文藝春秋(撮影・宮崎慎之輔)

 その後、谷中で2年間修行して、京都へ戻ってきたぐらいに、たまたまテレビをつけたら“愛犬家連続殺人事件”という事件がニュースで流れていて、犯人を見たらその人なんですよ。「あれ? これ私が行ってたペットショップ屋さんの社長だ。あの人そんな殺人をする人だったんだな」と思っていたんです。

「埼玉愛犬家連続殺人事件」

 1993年、埼玉県熊谷市で愛犬家ら男女4人が殺害された連続殺人事件。

 殺人や死体損壊・遺棄の容疑でペットショップを経営する男とその妻が逮捕された。

 それから何年もしてから(事件の)裁判が終わったくらいに、とある男性が来られまして。「実は愛犬家連続殺人事件の犯人といろいろとやり取りをしています」と。その方は犯人に実際に会いに行かれたそうなんですね。