京都・蓮久寺の三木大雲住職のもとには、助けを求める人が絶えない。ポルターガイストに悩まされている、人形をお祓いしてほしい、さまよう霊を供養成仏させてほしい……。

 そんな実話や自身の体験など、現代の怪談、奇譚の数々を収めた『怪談和尚の京都怪奇譚 幽冥の門篇』(文春文庫)より、背筋も凍る「怖がり」を特別公開。閉店後の百貨店に一人取り残されたアルバイト女性。彼女が地下通路で目にしてしまったのは――。(全2回の2回目/前編から続く

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 エレベーター内は、先程まで居た場所と違い、営業中と同様に明るく、一息つくことが出来ました。安心したせいか、先程よりも腹痛が酷くなってきました。

 エレベーターは3階に着き、扉が開きました。明るいエレベーター内から見るせいか、先程までいた階以上に暗く感じました。

 私は殆ど周りを見ることなく、俯いた状態で、駆け足で社員専用出入り口に繫がる扉へと向かいました。

 扉には「社員専用」というプレートが貼られていました。その扉は重たい鉄製で、横幅も普通の扉より一回りくらい大きなものです。

 扉を開けると「キーーー」と鉄のさび付いた部分が音を立てます。私はそのまま階段を、再び駆け足で地下まで降りていきました。

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 地下には、再び鉄の大きな扉があります。その扉を開けると、私が一番怖い地下通路になっています。

 地下通路に出ると、クーラーがかかっているのかと思うくらい涼しかったです。 そして、何故か湿ったカビのような匂いが漂っていました。

「もしかして、何か見たんですか」

 先程までとは比べものにならない恐怖を感じながら、出口のある方を見ると、丁度向こうから警備員さんが来られました。

「遅くまでご苦労様です」その警備員さんは、明るく声を掛けてくださいました。

「お疲れ様です。これから見回りですか。私は出口に行くんですけど……」もしかしたら一緒に出口まで行ってくれるかもしれないと期待して聞いてみました。

 すると「そうですか。先程男性の方が出て行かれましたが、恐らくあなたが最後かもしれませんね。私はこれから上の階まで、人が残っていないか見回って来ます」と、私の期待とは裏腹にそう答えられました。

「そうですか」私は少し期待していただけに、がっかりしてそう答えました。

 すると驚いたように私の顔を覗き込みながら、警備員さんが、不思議な質問をしてきました。

「もしかして、何か見たんですか」私は一瞬、何のことか分かりませんでした。