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部屋のベランダに見知らぬ女性が…ある“落とし物”を拾った女性の恐怖体験の結末

怪談和尚の怪奇譚――「落とし物」

2021/08/20
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財布を拾ってから怪奇現象が起こり始めた

 Aさんはある日、仕事終わりに同僚とお酒を飲みに行き、その帰り道にある交差点で財布を見つけて拾ったそうです。ところが、Aさんはベロベロに酔っていたうえに雨が降っていたこともあり、警察に届けることなく、自宅へ帰ったそうです。

「結局、いまだに警察に届けていないんです。もしかしたらその財布を拾ってから家で怪奇現象が起きる気がします」

「わかりました。では、まずお財布を警察に届けてみましょう。それで一度、様子を見ましょうか」

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 彼女はそのまま自宅に帰りましたが、すぐに慌てた様子で私のもとへ電話をかけてきました。

「よく見たら財布にお守りが付いているんです。もしかすると、このお守りが何か私に祟りのようなものを起こしたんじゃないですか?」

※写真はイメージ ©iStock.com

「お守りですから、そんなことはないと思うので、とりあえず警察に届けてください」

 その後、Aさんが拾った財布を警察に届けたところ、警察からこんな話をされたそうです。

「実はこの財布は、すでに持ち主の方が探していたんです。財布の中身や形状などが一致して、その方のものだと確認できればすぐに連絡します」

 それからしばらくすると、Aさんのもとへ警察から連絡がありました。

「財布の持ち主がわかりました。持ち主は30代の女性だったのですが、実はこの女性、もうお亡くなりになっています」

財布の持ち主は亡くなっていた

 財布の持ち主である女性は、Aさんが財布を拾った交差点で車にはねられて亡くなってしまったそうです。財布は、女性が車にはねられた時にどこかに飛んでいってしまった。それをAさんがたまたま見つけて拾ったのです。

※写真はイメージ ©iStock.com

 財布を探していたのは、その女性のご主人とご両親でした。Aさんはご遺族からとても感謝されたそうです。

「よく財布を見つけてくださいました。実は、この財布をずっと探していたんです」

 なぜ財布を探していたかというと、亡くなった女性には小さな娘さんがおり、ご遺族は娘さんから「ママが持っていた財布を見つけてほしい」と頼まれていたそうです。ところが探せど探せど財布は見つからなかった。しかし、Aさんが財布を拾って警察に届けたことでご遺族のもとに財布が戻ってきたのです。