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失明する可能性が倍増!? WHOは“近視”を「公衆衛生上の危機」に指定…意外と恐い“強度近視”のチェック法

『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』より #1

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目の機能低下は、「万病のもと」

 近視に関する直接の研究ではないが、目の機能の低下が、いかに私たちの生活に大きな影響を与えるか、という研究もある。

 視力の低下と様々な健康の影響について調べている奈良県立医科大学・眼科学教室の緒方奈保子教授が、こんな話を聞かせてくれた。

「脳が得る情報の8割を、目からの情報が占めると言われています。目の機能が低下して、そこから来る情報量が低下すると、脳が受ける刺激が減ってしまいます。すると脳の機能も低下してしまう。その結果、影響が全身に広がっていく。まさに悪循環。目の機能の低下は“万病のもと”なのです」

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 緒方さんのグループが、10年以上前から取り組んでいるのが、高齢者を対象に健康状態や認知機能など400項目を超える詳細な項目を調査する疫学調査だ。「藤原京EYEスタディ」と呼ばれる。

 約3000人を調べた調査からは、視力の低下によって認知症が疑われる割合が高くなっていることがわかってきた。認知機能をテストしたスコアから、認知症が疑われる人は、視力が良好なグループでは5.1パーセントだったのに対し、矯正しても視力0.7未満だったグループでは13.3パーセントと2.6倍に上っていたのだ。

©iStock.com

失われた時に初めてその大切さに気づく

 この調査は、目の機能の低下が脳に与える影響の大きさを物語っている。さらに、緒方さんたちの研究グループでは、目の機能と体内リズムの関係を調べる研究を進めている。

 目の機能が低下することで光を感じる能力が低下し、脳内の、体内のリズムを司る機能などが低下。これまで考えられていた以上に、動脈硬化や心筋梗塞など様々な体への影響があるのではないか、という研究だ。

 目から入る光・情報が、私たちの生活や健康を大きく左右しているということは、普段、当たり前すぎてなかなか実感できない。だが、これらが失われた時に初めて、私たちはその大切さに気づくのだろう。

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子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか (NHK出版新書)

大石 寛人 ,NHKスペシャル取材班

NHK出版

2021年6月10日 発売

失明する可能性が倍増!? WHOは“近視”を「公衆衛生上の危機」に指定…意外と恐い“強度近視”のチェック法

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