夏休みが始まり、娘たちは水遊びや花火、虫捕りなど夏を満喫している。
毎日娘たちが家にいることによって、親としての疲れも当然あるのだが、大人の目線で子どもの頃の追体験をできるのはなかなか楽しい。
子どもの興味が向いていなければ、カブトムシやセミの羽化を観察することも、水鉄砲で打ち合ってビショビショになることも、もうなかったかもしれないのだ。
自分が子どもだった頃の夏休みは、断片的にしか覚えていない。でも今、子どもと共に過ごしている夏休みは、きっと色濃く記憶に残るだろう。
長女を産んでから、私なりに試行錯誤を繰り返した
8月は次女の誕生月でもある。今年で3歳になり、来年からは幼稚園。入園すれば四六時中一緒だった状態から、淋しさとともに少し手が離れる。
女流棋士として、トーナメントプロとして今後も戦っていくために、私の中では今年度いっぱいまでが1つの堪えどころと考えていた。
長女が生まれてから約6年。
多くの仕事と共通するように、将棋も「指し盛り」と言われる、力を発揮しやすい時期と出産適齢期は概ね被っている。長いと言われている将棋指しの選手寿命だが、その時期での6年はやはり大きなウエイトが占めるだろう。
この6年間、私なりに状況に合わせて試行錯誤を繰り返した。今回はその経過を書いていきたい。
妊娠に気が付いたのはタイトル戦の最中だった。
当時、私はタイトル戦では着物を着ていたのだが、袴をはいた感じがどうにも何かいつもと違う。具体的には分からないが「何か変だ」と感じたのをよく覚えている。
安定期には精神面も安定、結果も出せた
少しして本格的につわりが始まると、常に気持ちが悪くなった。高温期が続くので体温は高いまま。身体も頭もだるくて日々の「将棋の勉強をしよう」という意欲を持つのが難しい。
特に「盤の前で考える」というのが辛く、詰将棋を解いたり、将棋を見たりと、横になって出来る勉強をした。
ただ、長年の習性だろうか、対局の日に将棋盤を目の前にすると、辛さは軽減された。
将棋界は10時に対局が開始されるのだが、これが大変ありがたかった。つわり中の通勤ラッシュは考えるだけでも厳しい。
私はつわりの酷さで言えば、軽い方だったのだと思う。重い人では入院することもあり、その場合は予定されていて対局不可能のものはすべて不戦敗となってしまう。
つわりが落ち着いて安定期になると、精神面も安定期を迎えた。
大人になってから一番ホルモンが安定していたと言っても過言ではないかもしれない。日々の勉強はとても地道で、根気が必要なので、精神が安定すると勉強もはかどる。
結果にも反映されており、2回の出産で過ごした安定期の通算成績は合わせて14勝1敗だった。