7月31日にNHK(Eテレ)が放送したETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」は驚きの連続だった。コロナ禍で追い詰められる精神科病院の内部でカメラが医師や看護師、患者らを密着撮影した。ところが、その過程で「現代の日本で本当に起きていることなのか?」と思わず耳を疑いたくなるようなショッキングな現実が浮かび上がってくる。

 取材班による撮影の現場は、病床数898床で全国最大の精神科病院の東京都立松沢病院。

 昨年4月に新型コロナの専用病棟を設置して、精神疾患と新型コロナの両方の治療に取り組むなど先進的な精神科病院だ。精神科病院は、マスク着用を指示されても守ることができない患者もいるなどの理由で、一般の病院に比べ、新型コロナウイルスの感染防止策の徹底がより難しい。

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NHK、ETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(2021年7月31日放送)より

「便がすごい…」。転院してきた患者たちの悲惨な状態

 松沢病院は、他の精神科病院でクラスターが起きたときに新型コロナウイルスに感染している患者を受け入れることを決め、精神疾患のある患者たちが次々に転院してくる。

 衝撃的だったのは、他の精神科病院から救急搬送されてくる患者たちの状況だ。大切に扱われていなかった感じが明白なのだ。おしりの骨の部分が壊死。床ずれが骨にまで達している。真っ赤な皮膚の下で筋肉が死んでいるなど悲惨な映像が映し出される。

 患者本人や彼らがもともといた精神科病院の医療スタッフに聞いてみると、そこでは築60年以上の古い建物の畳敷の部屋に布団を並べ、大部屋に陽性の患者と陰性の患者を混在させたままでクラスターが発生していたことが判明した。

「物品も不足気味というかあまり揃っていない精神科特有の環境」なのだと医療スタッフは証言する。

 2月にA病院(仮名)で起きた大規模クラスターで松沢病院に転院した患者の下半身を見たスタッフたちが思わず声を上げた。

「うわ、便がすごい」

「何日もおむつ替えていないんじゃない?」

NHK、ETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」(2021年7月31日放送)より

 排泄物の処理がなされていない。患者にインタビューすると、陽性患者を大部屋に集めて外から南京錠で鍵をかけていた実態が分かった。

「水! 水! 水!」などの阿鼻叫喚が響く地獄絵図

 畳の部屋に布団を敷き、真ん中にポータブルトイレを置いて、全員がそこで排泄したという。カーテンや仕切りはなく「プライバシーは一切ない」と証言する。

「仕切りもないし、している音も聞こえるし、当然、トイレしたら臭いし、している間も気まずいし」

 看護師を呼ぶナースコールもなく、声を張り上げて絶叫する状態。

「水! 水! 水!」などの阿鼻叫喚が響く地獄絵図だ。