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「ドラム式とタテ型、洗浄力で勝つのは?」「泥汚れを落とすのは洗剤ではなく…」 プロが教える意外と知らない“洗濯テクニック”

茂木貴史さんインタビュー#2

2021/08/14

 町のクリーニング屋でありながら、劇団四季やシルク・ドゥ・ソレイユ、クレイジーケンバンドなど国内外の有名アーティストの衣装クリーニングをしているクリーニング店「LIVRER YOKOHAMA」。プロの洗濯ノウハウを伝授した著書『日本一の洗濯屋が教える 間違いだらけの洗濯術』(アスコム)のなかから、“長男”の茂木貴史さんに、今日から使える「正しい」洗濯方法を教えていただきました。(全2回の2回目。前編を読む)

 

ドラム式洗濯機とタテ型洗濯機

――洗濯のプロとして、家庭での洗濯でいちばん間違っていると思うのはどんなことですか。

茂木貴史(以下、茂木) 全部です(笑)。いま、高性能な洗濯機も増えていますし、洗剤もたくさんの種類が売られていますが、どんなに高価な洗濯機で人気の洗剤を使っても、間違った洗濯方法では汚れはきれいになりません。

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 クリーニング店では基本的に二槽式の洗濯機を使っていますが、これは水の量や脱水のタイミングを全部自分で設定できるからです。これはさすがにベースの知識がないと難しいかもしれませんが、正直、日本では最新のドラム式でなくても、タテ型で充分だと思っています。

――つい先日、最新のドラム式洗濯機に買い替えたばかりです……。ドラム式はメリットがあまりないのでしょうか?

茂木 もちろん、ライフスタイルや家族構成はそれぞれ違うので、どれがいいというのは一概には言えません。乾燥に関しては、タテ型よりもドラム式の方が優れていますので、乾燥機を多く使うご家庭であれば、ドラム式の方が便利かもしれません。でも、洗浄力でみると、日本の水道水は水そのものに高い洗浄効果がある軟水なので、水流で洗うタテ型で十分汚れが落ちるんです。むしろ、ドラム式は水量が少ないので、「洗浄力」という点では不利になります。

 

すすぎは実は洗いよりも重要

――消費者としては、水を節約できる「節水」機能に優れている機種の方がいいように思います。水量が少ないことと洗浄力は関係があるのですか?

茂木 洗濯の「洗い」は汚れを繊維から浮かせるための工程で、「脱水」で汚れが繊維から離れます。そして、汚れが落ちているのは、実は「すすぎ」の行程なのです。美容院で髪を洗ってもらうと、「まだやるの?」というくらいすすぎに時間をかけますよね。これと同じで、すすぎは洗いよりも重要なんです。

 すすぎが不十分で繊維に洗剤や汚れが残ると、そこに黄ばみが生じたり、生乾きのニオイの原因になったりします。よく、「汚れを落とすために」と少ない水量でたくさんの洗剤を使う方がいらっしゃいますが、いちばんやってはいけない間違いです。