手間がかかって大変だと思うこともあるかもしれません。しかし自分が若い頃の感覚のまま、「俺の背中を見て学べ」と突き放すやり方では、部下の育成はうまくいきません。時代の変化とともに、マネジメントの手法もアップデートが求められているのです。
CASE4
社内で不正が発覚!しかし、会社はなかなか動かない
偶然、社内で過去の「不祥事」を発見してしまった。製品出荷前に決められたチェック手順を踏まねばならないのに、ある工場でその一部を省略していたのだ。検査部課長である私は即時公表することを上司に迫ったが、上司は「待て」と言ったまま放置している。どうやら、握りつぶそうとしているようだ。気持ちはわかるが、もしこの事実が外部にバレたら、社の存続に関わるかもしれない……。
Q.「内部告発」に踏み切るべきか?それとも他にすべきことがあるのか?
「会社のために隠す」 は本当に正義か?
「むしろ知らなかったほうが幸せだった」と思えるような、非常にシビアなケースです。ただ、知ってしまったからには、今さら「見なかったふり」はできません。
池井戸潤氏の小説には、こうしたケースがよく出てきます。
例えば、映画化もされた『七つの会議』(日本経済新聞出版)という小説では、規格に沿わないネジを使った製品が出荷されてしまい、そのことを知ってしまった社員の苦悩が描かれます。
不正は問題だが、その製品は飛行機にまで使われており、自主回収となったら損害は甚大なものとなる。会社の存続すら危ぶまれる。果たして公表すべきか否か……。
もちろん、組織を守るためにあえて隠蔽に加担するという選択もあります。しかし、コンプライアンスに対して厳しくなっている昨今、問題はいずれ必ず明るみに出ると考えておいたほうがいいでしょう。「バレない不正はない」ということは、歴史が証明しています。
そもそも、規格に満たないものを出荷して、もし事故が起これば、顧客に多大な迷惑がかかります。自分たちは何のために、誰のために仕事をしているのかを考えれば、おのずと答えは出てくるはずです。
告発のセオリーは 「上の上」 に訴えること
告発すると覚悟を決めたら、あとはプロセスの問題です。
セオリーはやはり、上司のその上、つまりこのケースでは本部長や役員に相談することでしょう。それでもダメならさらに上。最終的には社長に直訴する必要があるかもしれません。