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「私生活はさらけ出せるけど、女の子にセリフを言わせるのは恥ずかしい」“育児エッセイ”と“ひとくいフィクション”を同時に描くマンガ家が考えていること

福満しげゆきさんインタビュー #2

note

――寝ることで気分転換を図る、とか?

福満 “切り替え待ち”をして寝ると、僕は信じられないくらい寝ちゃうんですよ。こんなに寝ているマンガ家はいないんじゃないかと思うくらいです。「これだけしか進んでいないのに、こんなに寝てしまった!」とか。前向きな睡眠じゃないんですよね。ですから、とにかく時間を置く。週刊連載のようなペースでやるのはシンドいので、いまぐらいのペースで続けていけたら……とは思っています。

可愛い女の子にセリフをしゃべらせる恥ずかしさ

――エッセイマンガのときは、露悪的というか悪ぶるというか、「俺は世間に対してこんなことを言ってやったぞ!」的な演出部分もあると思うんですよ。

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福満 ええ、ええ。あります。

――ストーリーマンガでキャラクターにセリフを言わせる場合は、それとはまた違ったロジックなのでしょうか?

福満 キャラクターにセリフをしゃべらせる恥ずかしさ、というのはあります。それを克服するのに結構な年月を費やしました。

©福満しげゆき/双葉社

――若い頃には照れや恥ずかしさを感じずにできていたのに、エッセイマンガをやるようになってから、抵抗を感じるようになった?

福満 そうです。エッセイマンガを描くときには「目立ってやろう」とか「爪痕を残してやろう」という意識はありました。それで世間に認められたようなところがありますので、そうやって訓練されて、鍛えられていき、自分でも(エッセイが)得意だという意識があったんでしょうね。

 その反面、スタンダードなストーリーマンガを描くうえでの照れとか気恥ずかしさが抜けなくて、苦手意識を持つようになったのかもしれません。たとえば、女の子が男の子に向かって真っ直ぐに気持ちを伝えれば、読者だって気持ちがいいはずなんですよ。それなのに僕は「いや、女はそんなに優しくない!」とか思っちゃう。「こういう展開になったほうがいいよね」というところで、照れてしまい、それを回避してしまう。