『僕の小規模な生活』(講談社)や『うちの妻ってどうでしょう?』(双葉社)などの代表作があるように、エッセイマンガ家として広く認知され、評価されてきた福満しげゆき氏。現在も講談社「コミックDAYS」で『妻と僕の小規模な育児』、小学館「ビッグコミックスペリオール」で『妻観察日記』と、2本のエッセイマンガを連載している。

 その一方で、2020年4月からは双葉社「webアクション」で、自身ひさしぶりのストーリーマンガの連載を開始した。タイトルは『ひとくい家族』。「人肉食(カニバリズム)」が題材である。エッセイと同様のほのぼのとした画風で描き出されるブラックユーモアは、連載開始当初からマンガファンのあいだで大きな反響を呼んだ。人気エッセイマンガ家は、どうして「ひとくい」をテーマにストーリーマンガを描き始めたのだろうか。福満氏と担当編集者に聞いた。

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©福満しげゆき/双葉社

「ネームを描いている最中に『これは無理だな』と…」

――『ひとくい家族』の連載を開始するまでの経緯をお教えください。

福満 はじめは読切用に描きはじめたんです。まあ、出オチのようなところがあるマンガですので、そんなに長く引っ張れる話でもなく、いまでも読切のようなものだと思っておるんですが……。もともとは別の雑誌の担当編集者に提出するために進めていたんですが、ネームを描いている最中に「これは無理だな」と思うようになりました。

――無理、というのは?

福満 (人肉食が)倫理的なことや規制的な部分で掲載は難しいんじゃないだろうか、と。それでその担当編集者に、途中までの段階でネームを見てもらったんです。編集部で確認を取ってもらったようなんですけど、やはり「うちでは無理」とのことでした。それで『ひとくい家族』は凍結していたんです。

――それを双葉社に持っていった経緯は?

福満 双葉社の担当編集者さんに何度か飲みに連れて行ってもらってたんです。タダ酒を飲ませてもらっているのも申し訳なくて、「何か企画を出さなければ……!」と自分なりに思うようになり、そのときにいくつか提案したうちのひとつでした。