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「規模を下げたほうが、むしろ人は驚く」

――『生活』(講談社『生活【完全版】』収録)でもそうなんですけど、福満先生の作品はアクションシーンの躍動感が素晴らしいと感じています。どういったことを意識されていますか?

福満 映画でもアニメでもそうなんですけど、アクションでガーッと決め技をするときに、背景が何もなかったり、集中線だけだったりすると、ダメなんじゃないでしょうか。ちゃんと引力があって、上下がハッキリしていて、どこで誰が何をしているかがわかるようでなければ、いいアクションにはならないと思うんですよね。

――なるほど。『生活』や『就職難!! ゾンビ取りガール』(講談社)、今回の『ひとくい家族』は、ご近所で起きている出来事というか、「町内を出ない」感があります。ロケーションが具体的ですよね。

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福満 普段、目にしているような日常の住宅街でとんでもないことが起きるから面白いのではないでしょうか。ハリウッド映画でビルが大爆破するのは見慣れていても、住宅街で家が爆破するのは見慣れていない。

 たとえば映画なんかでも、1作目はすごくコンパクトにまとまっていたのに、続編になって「今度は世界だ!」となると、とたんに面白くなくなる作品って、ありますよね? 規模を下げたほうが、むしろ人は驚くんじゃないかと思っています。

――その「身近」な感じは武器についても言えることでしょうか。お父さんの武器は麺棒で、『生活』の“オジさん”はカナヅチが武器でした。

福満 武器はですね、あまり「武器武器しているもの」はいけない、まず刃物はいけない、と思っていまして……。日常の中に溶け込んでいるものじゃないといけない。映画『刑事物語』では武田鉄矢がハンガーを武器にしますけど、あれが刃物だったら成立しないわけですね。

©福満しげゆき/双葉社

 同じように『キック・アス』なら、主人公が背負っている2本の棒が刃物ではいけないし、『バットマン』がマシンガンを撃ったり、『スパイダーマン』が手から蜘蛛の糸ではなく濃硫酸を出したりしたらダメだと思うんですよ。ヒーローというのは、そういうところがあるのではないでしょうか。

後編へ続く

ひとくい家族(1) (アクションコミックス)

福満 しげゆき

双葉社

2021年6月17日 発売