――それで「凛子」と。
福満 死ぬほどイヤだったんですけど、つけたらつけたで、描いているうちにもう一段、奥行きのようなものを感じるようになりまして……。名前がつくと非常に愛着が湧いて、これまでにはない、ちょっと新鮮な体験でしたねぇ。
「悪いことをしているはずなのに、なぜか応援しちゃう」その理由を考えると…
――「家族」を描くつもりだった、とは?
編集 私も福満さんも、アメリカのテレビドラマシリーズ『ブレイキング・バッド』が好きなんです。あれはお父さんが家族を養ったり救ったりするためにメス(メタンフェタミン=覚醒剤)を製造する話です。悪いことをしているはずなのに、なぜか視聴者はお父さんを応援しちゃう。なんで応援しちゃうんだろう、あのドラマの爽快さは何だろう、と考えると、家族のためにお父さんが頑張っているからだと思うんです。
福満 『ひとくい家族』のお父さんは、社会的には頭のおかしい人かもしれないけれど、お父さん自身の倫理観としては、家族のために一生懸命働いている。そういった環境で育った影響もあるけれど、娘(凛子)もそれを理解している部分もある。でも、会社をクビになっているのに家族には打ち明けられず、悪事に手を染めて家にお金を入れていた、家族も父親がクビになっていたのを知りませんでした、なんて事件はちらほらとありましたからねぇ。
編集 究極の家族愛の物語だと思っています。家族愛と倫理観が天秤にかけられているところが、スリリングで面白いですよね。
――1巻のあとがきには、今後の予定について少し触れられています。見所は?
福満 まあ、あの、どんなにうまくまとまったとしても、テーマ的に映像化とかアニメ化なんて話はないわけですから、振り切っていったほうがいいですよね。そんなにキモいシーンがたくさんあるわけではないので、ギャグマンガとして気楽な気持ちで読んでいただけたらうれしいです。