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《16歳で母親を殺害》「金属バットで頭ではなく、より苦しむ躰を殴った…」元死刑囚・山地悠紀夫が語った母親を殺害した3つの理由

『連続殺人犯』より#7

2021/08/30

source : 文春文庫

genre : ライフ, 読書, 社会

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同級生によるイジメで不登校に

 ときを同じくして、山地家の困窮も表面化した。電気やガスがたびたび止められ、借金取りが自宅にやってくるようになったのである。パートに出ている母親は、しきりと息子に自分が再婚したらどうするかと尋ねるようになり、山地は「勝手にしろ」と言いながらも、さらに態度を硬化させていった。

 地元の中学に通った山地だが、2年の2学期からは登校しなくなった。小学校時代から、まわりと合わせられない山地へのイジメはあったが、中学に入ってからはよりそれが顕在化したのだ。同級生による教室からの締め出しなどのイジメに反発しての行動だった。

 この時期、彼の母もまた現実から逃避しようとしていたのかもしれない。彼女の知人は証言する。

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「浩二さんが死んでから、再婚相手を探していた敏江さんは、化粧が濃くなり、服装もだんだん派手になっていきました。ただ、おしゃれにおカネを遣う余裕はなかったはずで、聞いた話だと、ローンを組んだり借金をしてまかなっていたようです」

新聞配達のアルバイトを始めることに

 中学を卒業する99年の1月、山地は住み込みで働ける、岡山県倉敷市の縫製工場の採用試験を受けるが失敗。卒業生でただひとり、進路の決まらない生徒として学生生活を終えた。

 その後、建設工事の仕事をしてみたが、中学を卒業したばかりで線の細い山地には体力的に無理があり、すぐに音を上げた。そんなとき、中学時代の友人から誘われ、新聞配達のアルバイトを始めることになった。大阪での事件が起きて新聞販売店を訪ねるも取材拒否で、話を聞くことはできなかったが、新聞配達の仕事は山地に合っていたようだ。彼はそこで熱心に働き、認められ、初めて自分自身で稼ぐ喜びを知った。

 自由に遣えるカネを持つようになった山地が通っていたのは、物心ついたころから知っているオカダトーイ(仮名)というおもちゃ屋だった。そこでトレーディングカードを使ったゲームを、小中学生相手に楽しむのを日課としていた。

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