文春オンライン

大阪から1時間…座って通勤民垂涎の“ナゾの終着駅”「野洲」には何がある? 走っていた“電車じゃないもの”って?

2021/08/23

genre : ライフ, 歴史, , 社会

note

 その答えはシンプルで、滋賀県内で鉄道や路線バスを営む近江鉄道は西武鉄道のグループ会社(西武グループ創業者の堤康次郎は近江出身)。なので、ライオンズカラーのバスが走っているというわけだ。だからいくらライオンズカラーのバスを見て育ったとはいえ、野洲の人たちが必ずしもライオンズファンばかりとは限らない。野洲出身の歌手・西川貴教がタイガースファンなのは有名である。

 

「野洲で、新しいことをやろうとしているんですよ」

 なぜか遠く近江の地で松崎しげるの『地平を駈ける獅子を見た』が脳内にこだましながら、そろそろ野洲をあとにしようと思った。ところが、そんなときにJR西日本の広報氏から耳寄りのお話を頂いた。

「野洲の車両基地でですね、新しいことをやろうとしているんですよ」

ADVERTISEMENT

 新しいこととはいったい何か。

「ソフトバンクさんと一緒に自動運転と隊列走行技術を用いたBRTの開発プロジェクトを進めておりまして、そのテストコースを野洲の車両基地の中に作っているんです。まだ見ることはできないんですが、これが実現すれば鉄道の駅からの二次交通の利便性をより高めることができ、持続可能な交通サービスの実現につながると考えています」

 そんなわけで、最後にタクシーを飛ばして野洲の車両基地の近くまでやってきた。電車の住処はとてつもなく広いので、どこが近くというのかわかりにくいが、営業中の電車が横を走り抜ける通り沿い。そこからちらっと基地の敷地内で工事をしている様子がみえる。ここで、バス(BRTはBus Rapid Transitの略称)が隊列を組んで自動運転する実験がまもなく行われるということだ。

 

 自動運転のバスは、近い将来の公共交通の主役を担うことを期待される新技術。かつて、稲作地帯の中で街道が分かれる交通の要衝だった町は、時代が変わっても“交通の町”であることは変わらないのかもしれない。

写真=鼠入昌史

大阪から1時間…座って通勤民垂涎の“ナゾの終着駅”「野洲」には何がある? 走っていた“電車じゃないもの”って?

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー