ここ数年、あちこちの駅を訪れては原稿を書くという日々を過ごしている。駅はもう星の数ほどにあるので尽きることはたぶんない。それに、同じ駅であっても何度か訪れるたびにいくらかは違った顔を見せてくれるものだから、結局のところ意外に飽きないのである。

 で、今回やってきた野洲駅は3度目の訪問である。1度目は文春オンラインで網干駅から野洲駅までの新快速の旅をするというものだった。どれくらいの時間がかかったのかは忘れてしまったが、姫路も明石も三ノ宮も大阪も京都も草津も通り過ぎる、とほうもなく壮大な旅であった。

“ナゾの終着駅”「野洲」には何がある? 実はいま、新しいことが行われているのだとか…

 2度目は東海道線全駅を降りたルポ『東海道線154駅』を書くために野洲駅にやってきた。そのときは、米原駅からひとつひとつ降りてきたあげくの野洲駅だったので、どこをとっても瓜ふたつの滋賀県内の駅にさすがに退屈さを感じていたのをよく覚えている。

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 そして3度目である。

京阪神の“ナゾの終着駅”「野洲」には何がある?

 言うまでもなく、野洲駅は京阪神における“ナゾの終着駅”の筆頭である。ナゾの終着駅番付があるとすれば、西の横綱にその名を書いても文句は言われまい。

今回の路線図。滋賀県は琵琶湖の南側に位置する「野洲」

 京都駅から米原方面の新快速に乗ると、日中は毎時3本中1本が野洲駅を終着とする。列車の本数が増える夕方から夜にかけてもおおよそ半数が野洲ゆきだ。野洲よりも米原寄りに住んでいる人はなんでおらが村に電車は行かないのかとほぞをかみ、野洲より手前に住んでいる人は本数も多くてありがたや。とにかく、野洲駅は関西を代表する通勤電車・新快速の終点なのである。

 

 とはいっても、関西、それも滋賀に住んでいる人でもなければ野洲駅がどこにあるのか、ピンとこないだろう。

 大まかには路線図を見ていただけばいいのだが、滋賀県は琵琶湖の南側、野洲川が作り出した琵琶湖のほとりの沖積平野の町である。野洲という地名も、沖積平野を意味する古代の言葉が由来だとか。南に少し行けば草津(温泉はありません、念のため)、北に少し行けば水郷都市の近江八幡だ。