テレビがテレビという枠を超えて、「とにかく面白いもの」を語り合おうというガチな番組を発見した。8月17日夜に放送された「コンテンツ・ラヴァーズ」(NHK総合テレビ)。特に“怪女優”として最近ブレイク中の松本まりかが、かなり「いい味」を出している。
他局の話題ばかりの「本気ぶり」
TBSの「王様のブランチ」のように世の中で話題になっているコンテンツを紹介する番組がこのところ目につくようにはなったものの、さりげなく自局番組を売り込んだりとPRのにおいがプンプン漂う。ところが、この番組では他局の話題ばかりで、自局の番組はあまり登場しない。PRめいたウソがなく、出演者と制作者の「本気ぶり」が伝わってくる。
コロナのために外出せずに、巣ごもりしてNetflixなどの配信系コンテンツにはまっている人は少なくない。そんな人たちに向けて、目利きの有名人がコンテンツへの「愛」を語り合っている。
ここに登場するのが、講談師の神田伯山、テレビプロデューサーの佐久間宣行、俳優の松本まりか、そしてNHKきってのコンテンツフリークの杉浦友紀アナウンサー。それぞれがハマっているコンテンツ(大半は映像で一部が音声)を披露し合う。これが民放のドラマやNetflix、さらにはYouTube、音声メディアのポッドキャストなどまで網羅していて実に面白い。
ドラマ「俺の家の話」はクドカンから長瀬智也への“はなむけ”
まず話題になったのが、2021年上半期のテレビドラマ「俺の家の話」(TBS)。主演の長瀬智也は、このドラマを最後に裏方に転身することでも話題になった。
神田「『俺の家の話』は観ようと思いましたね。…あれはすごかった」
杉浦「最高!」
神田伯山は、落語の三題噺(さんだいばなし)にたとえて、能、介護、プロレスがお題になっていて、それぞれの世界をすごく勉強した脚本になっていると分析する。それを受けて佐久間宣行が(脚本の宮藤官九郎が)三題噺をちゃんと仕上げながら「芸能界を引退する長瀬さんへの“はなむけ”のドラマにもなっている」として「別のレイヤーも走っている」と指摘した。
佐久間「だから最後、あの世とこの世でいつでも戻ってこれるじゃないかというメッセージに落としているのは、(中略)長瀬さんに対しても裏方でも表でも関係ないじゃないか、戻ってこれるメッセージも暗に出しているメチャクチャ熱いドラマ」
杉浦アナが、同じく宮藤官九郎脚本のドラマ「いだてん」(NHK)が低視聴率にあえでいたことから「必ずしも(視聴率の)数字と質が比例するわけではない」として、「大豆田とわ子と三人の元夫」(関西テレビ・フジテレビ、脚本・坂元裕二・2021年)を例に出す。
佐久間「本当の大事なことは語らないまま、雑談で(話が)進んでいく。その雑談がすばらしいし、逆に言うと衝撃的なシーンがあるんですけどメチャクチャあっさり流れていく」
松本「おしゃれー」