「東京オリンピックは始まる前に完全に終わってしまっていた」
実は東京オリンピックの主役がアスリート以上に“外国からの観光客”だったと指摘し、その主役を失った大会を抜け殻と表現したマライ・メントラインさん。
マライさんはドイツの公共放送「ドイツ第2テレビ」のプロデューサーとしてオリンピック開会式の解説などを務めるかたわら、ミステリー小説のレビューをし、千代田区などでインバウンド観光のアドバイザーをし、そして「職業はドイツ人」と名乗る。
なぜマライさんの言葉は人を引きつけるのか。そして内側と外側からオリンピックはどう見えたのだろうか。(全2回の1回目/後編を読む)
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――今日はお時間いただきありがとうございます。オリンピックの主役はアスリートではなく観光客だったという指摘にはハッとしました。
マライ こちらこそありがとうございます。私自身はそれほど特別なことを言ったつもりはなかったので、反響に驚いています。ただ東京オリンピックって合計で4兆円くらいかかっていて、いくらなんでもアスリートだけのためにそんな額を出せるわけはないんですよね。だから何かプラスアルファの理由があるはずで、日本の場合はそれが「世界的な観光大国になるためのブースターとしてのオリンピック」なんだろうと自然に思っていました。
観光客が東京で遊んでくれれば…
――そのブースターの中心が、大会期間中に東京を訪れる大勢の観光客だったんですね。
マライ そうですね。私は千代田区や千葉市などのインバウンド政策のお手伝いもしていて、日本の交通機関や飲食店が海外から観光客を迎え入れるために何年もかけて態勢を整えてきたのを間近で見ています。実際に東京のホスピタリティはここ数年でめちゃくちゃ向上していて、普通にオリンピックが開催されていれば日本じゅうがお祭り騒ぎになった確信があります。
――現在でもアンケートなどではオリンピックを「やってよかった」という声が優勢なようです。
マライ 「テレビ観戦を楽しめた」的な観点からはそういう反応になるでしょうね。ただ私が重視したいのは、「興行」としての戦略的な成否です。
――どういうことでしょう?
マライ たとえば開催費用の問題とか森喜朗元組織委員会会長の女性差別発言とか、東京オリンピックの問題点はコロナウイルスを抜きにしてもたくさんありました。それでも(もしコロナ問題が発生せず)観光客が日本へ来て東京のあちこちで遊び、海外メディアが観光名所や文化を紹介してくれれば、観光アピールという最大の目標は達成されて「ひとまず成功」という結果になっていたはずなんです。しかしその成果はほとんどゼロになってしまいました。