「盆踊り、すごくなかったですか?」
――閉会式はどうでしたか?
マライ 閉会式は……解説を頼まれなくてよかったなと思っていました(笑)。ドイツ第1テレビと第2テレビは日替わりでオリンピックを放送していて、開会式は私たち、閉会式は第1テレビの担当だったので。
――解説のしようがない、と。
マライ 盆踊り、すごくなかったですか? 選手たちを特定ゾーンに押し込んで、それをボランティアたちがゆらゆらと柵みたく囲んで、踊り手たちから完全に切り離す。あの「楽しさとは正反対」のサムシング。会場では何の説明もないので、選手たちもぽかんとしていました。真面目な話、あれならいっそ(ネットでネタ的に語られていた)マツケンサンバの方が「よくわからないけど楽しいね」っていう雰囲気になった可能性さえあったんじゃないかと思います。
――閉会式は1964年の東京オリンピックへのオマージュも多くて、海外の人はこれを見てわかるのだろうかと思いました。
マライ わかりませんね(笑)。「オリンピック・マーチ」も最後に出た「ARIGATO」の文字も、日本人のしかも上の世代にしか通じないような"エモさ”を世界に発信されても困るというか。あの良かった時代に戻りたいという後ろ向きな感じもキツかったです。
――日本のイメージを上げるはずのオリンピックなのに、結果的にマイナスイメージを作ってしまったのでしょうか。
マライ 実はそうとも言えないんです。
――そうなのですか?
マライ それぐらい海外から見た東京オリンピックの印象が弱かったんです。日本の新しいイメージも打ち出せなかったけれど、マイナスのインパクトもなかった。まさに「無」のオリンピックでした。
――非常に複雑な心境になりますね。
マライ これだけ色々やらかしたのにイメージが落ちなくてラッキーと考えればいいのか、膨大なお金とエネルギーを使ったのに何も得られなくて失敗と考えるべきなのか、私も悩んでいます。ただ中国や韓国が文化の戦略的輸出に積極的ないま、東京オリンピックは日本の存在感を再アピールする絶好のチャンスでした。それが「無」という結果になったとすれば、やはり成功とは言えないですよね。(#2に続く)