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――実際の開会式中継ではどんな話をされたんですか?

マライ 日本について何も知らないドイツ人が聞いても前より日本に興味を持つように、と思って喋ってましたね。たとえば大坂なおみさんについて「彼女のブレイクを機に、日本では『女性アスリートの社会・政治的発言』の是非をめぐる議論が活性化しました」と紹介したり、「富士山は『フジヤマ』ではなく『フジサン』だ」とか。そうしたら、「日本愛がある」とドイツで好評だったようでほっとしました。ピクトグラムは説明しなくても楽しかったという人が多かったですね。

中には言葉の壁や文化の壁を超える演出も ⒸJMPA

ドイツから見た日本は本当に「サブカルチャーの国」?

――日本では「マリオがでなくて残念」「AKIRAの金田のバイクが見たかった」というゲーム・アニメなどの登場を期待する声が大きかったのですが、ドイツから見てもやはり日本というとサブカルチャーの国なのですか?

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マライ それが実は結構難しくて、世代によって日本のイメージが全然違うんです。戦前戦中の影響が強い世代にとって日本は今でも「かつての同盟国」で、ハラキリ・侘び寂び的な精神世界の国という認識です。いわゆる戦後世代にとっては「トヨタやソニーがある車や家電が強い工業国」だし、私のような80年代以降に生まれた世代にとってはもちろん「アニメとゲームの国」です。

――サブカルチャー一色ではないのですね。

マライ 実はドイツは文化について保守的で、サブカルチャーは大人になったら卒業するものという雰囲気も強い。「セーラームーン」などの日本マンガが無制限に大ヒットしたフランスとはちょっと温度感が違います。とはいえポケモンやNARUTOは大人気だし、エヴァンゲリオンや攻殻機動隊の濃いファンももちろんいますけどね。

メディアセンターが置かれた東京ビッグサイト マライさん提供

――期待されているものがバラバラというのは難しい条件ですが、マライさんはどうすればもう少し魅力的な開会式になったと思われますか。

マライ 観光大国・日本をアピールするという目的から考えれば、私がマンガファンなことを差し引いても、やっぱりマンガ・アニメ・ゲームの底力を「これぞ!」という形で効果的に活用して欲しかった気持ちはありますね。「AKIRA」やマリオの生みの親の宮本茂さんの出演が予定されていた当初の開会式プランはぜひ見てみたかったです。優れたクリエイターやアーティストが日本には大勢いるのに、その力を発揮する場所を与えられなかったのは本当にもったいなかったと思います。